2006 Fiscal Year Annual Research Report
尾索類の運動を制御する基本神経回路に関する系統比較研究
Project/Area Number |
04J02291
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
西野 敦雄 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 尾索動物 / オタマジャクシ / 遊泳運動 / 運動生理 / 神経筋結合 |
Research Abstract |
尾索動物は脊椎動物と近縁な動物系統である。それらは脊椎動物と共通したオタマジャクシ体制を示すが、その細胞構成はきわめて単純である。ホヤ幼生の場合、筋肉細胞数は高々40個で、運動神経細胞は10個に満たないにも関わらず、高度に制御された遊泳運動を行う。本研究は、ホヤ幼生などの尾索動物オタマジャクシを材料として、個体レベルの運動能力を正確に定め、それを支える神経生物学的・分子生理学的基盤を明らかにすることを目的としていた。 本年度はカタユウレイボヤ幼生の遊泳運動を制御する重要な機能素子としてニコチン受容体(nAChR)、グリシン受容体(GlyR)に特に注目し、そのホヤ幼生における発現様式と分子機能について解析を行った。1.カタユウレイボヤゲノム配列を詳細に調べ、計10個のnAChR遺伝子の全長cDNA配列とゲノム上の遺伝子構造を明らかにした。分子系統解析から、尾索動物は脊椎動物と類似のnAChRサブユニット構成を持つことが確かめられた。2.尾芽胚期から幼生期に至る段階での発現様式を定め、幼生の筋肉細胞で発現するサブユニット群と、神経細胞で発現するサブユニット群を決定した。3.幼生の筋肉で発現するサブユニット(Ci-nAChR-A1,-BGDE3,-B2/4)に注目し、さらに解析を進めた。筋肉で発現する3つのサブユニットと蛍光タンパク質との融合タンパク質を幼生筋肉に発現させると、筋肉帯背側に沿ったステッチ状の構造に共局在することを明らかにした。このステッチは、運動神経細胞の軸索とよく重なったことから、これら3つが、確かに神経筋シナプス後膜に濃縮することが示された。4.幼生の筋肉で発現するA1,BGDF3,B2/4をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させ解析したところ、この3種のサブユニットを共発現させると、生理的濃度のAChに反応して大きな電流が観察された。このとき、B2/4を共発現しないと電流量が著しく減少し、BGDE3を共発現しないと電流が消失した。またこのA1,BGDE3,B2/4で構成されるイオンチャネルは著しい内向き整流性を示すこと、相当量のカルシウム透過性を示すことを示した。これらは、脊椎動物の筋肉型nAChRよりむしろ神経型nAChRに近いチャネル特性である。5.BGDE3に対するモルフォリノオリゴを用いて幼生における発現を抑制すると、遊泳運動が完全に抑制された。以上により、カタユウレイボヤにおける筋肉型nAChRのサブユニット構成、局在様式、電気的特性、生体内での機能を解明した。これらの結果を現在、論文としてまとめている。 また、脊椎動物で左右交互の体幹筋収縮を調節するGlyRについて、ホヤの相同遺伝子を単離し、同様の解析を行った。ホヤGlyRは神経系では運動神経細胞に主に発現するほか、筋肉細胞でも発現していると示唆された。同様のパターンは同遺伝子の2.5kb上流の配列の導入によっても観察された。カエル卵母細胞にこれを発現させたところ、グリシンに反応した電流が観察された。これらの結果についても論文としてまとめている。
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Research Products
(3 results)