2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J02337
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Research Institution | National Institutes of Natural Sciences Okazaki Research Facilities |
Principal Investigator |
矢野 覚士 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員PD
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Keywords | 陽葉と陰葉 / 葉の発生制御 / 葉肉細胞の軸性 / systemic signaling / 光環境応答 / 糖シグナル / 光合成 / 細胞分裂 |
Research Abstract |
陸上植物は生育する光環境に応じて陽葉と陰葉を形成する。現在までに、陽葉と陰葉を生理学的、生態学的に比較した研究が数多くおこなわれてきたが、その発生・分化過程、特に制御機構を解析した研究は数少ない。陽・陰葉化においては光環境を認識することは陽・陰葉を理解する上で非常に重要である。我々はこれまでに、陽・陰葉化の発生過程の解析、光認識機構の解析を行ってきた。我々が明らかにした事として、陽・陰葉への分化に成熟葉の光環境が大きく影響を与える事、陽葉形成時の細胞層数の増加は付加的な細胞分裂を伴わず、分裂方向の変化によって達成されている事、などが挙げられる。これらの事は、成熟葉から新しい葉へのlong-distance signalingが存在し、そのシグナルに応じて葉の発生プログラムが変更される事を意味している。本研究の目的は、このシグナルがいったい何であるか?どうやって細胞が厚さ方向への軸性を認識しているか?という事を明らかにする事である。 陽・陰葉化に関わる光認識機構は、光受容体、光合成電子伝達系の酸化還元状態、光合成産物である糖の量などが考えられる。これらの可能性のうち、糖に関してはシンク・ソースの関係があるので、成熟葉から新しい葉へのシグナル候補として最も期待される。これを検証するために、シロイヌナズナを糖含量の異なる培地上で培養し、葉の形態を比較した。その結果、培地に含まれるスクロースが多くなると葉を構成する細胞層が増える事が明らかになった。しかしながら、葉の厚さは糖濃度に依存した増減が見られなかった(平成17年日本植物生理学大会で発表)。このため、スクロース以外の要因も葉の発生を制御していると考えられる。 また、葉の厚さに異常のある変異体のスクリーニングも同時に行っている。これまでのところ、望ましい変異体は見つかっていないが、継続して選抜を続ける。
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