2006 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀政治思想の形成におけるルカーチの美学と革命論の連関に関する思想史的研究
Project/Area Number |
04J02367
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
西永 亮 成蹊大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 政治思想史 / 政治理論 / 美学 / 文明 / 文化 / ルカーチ |
Research Abstract |
本研究は、第一次世界大戦勃発前後からスターリン体制確立までの期間におけるG・ルカーチの美学と政治思想に関する研究を通して、20世紀政治思想の形成の特質を解明しようとするものである。本年度では、昨年度に投稿していた論文が審査を経て掲載されることが決定したのをうけ、査読委員のコメントも参照しながら、論文を完成させた。その結果、20世紀政治思想の形成における「文化戦争」から「文化革命」への思想史的展開が明らかとなった。この成果は、論文「「文化戦争」から「文化革命」へ-第一次世界大戦期ルカーチにおける西欧・ドイツ・ロシアの連関」にまとめられ、『年報政治学2006-I』(木鐸社、2006年)にて発表された。 次に、20世紀政治思想の形成の歴史社会学的背景を明らかにすべく、E.ホブズボームの「20世紀」論とN.エリアスの「文明化」論を総合的に分析した。その結果、ヨーロッパにおける世紀の分水嶺は、1、工業化にともなう社会の水平化・平準化、2、そうした社会構造の変容を土台として生じた「全体戦争」(二つの世界戦争)と「世界革命」(ロシアに端を発したヨーロッパ各地での革命)に見出されることが明らかとなった。ここから、20世紀はヨーロッパ文明の崩壊によって幕を開けたと結論づけられる。この成果は、共著『悪と正義の政治理論』(太田義器・谷澤正嗣編、ナカニシヤ出版、2007年予定)の第3章「二十世紀における文明と悪」としてまとめられ、出版が予定されている。 以上の成果を踏まえ、今後はルカーチと1、Th.マンとの関係、2、O.シュペングラーの文明論としての「西欧の没落」観との比較検討が研究課題となる。
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Research Products
(2 results)