2005 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀政治思想の形成におけるルカーチの美学と革命論の連関に関する思想史的研究
Project/Area Number |
04J02367
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
西永 亮 成蹊大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 政治思想史 / 政治理論 / 美学 / 文化 / 文明 / エリアス / ルカーチ / ジンメル |
Research Abstract |
本研究は、第一次世界大戦勃発前後からスターリン体制確立までの期間におけるG・ルカーチの美学と政治思想に関する研究を通して、20世紀政治思想の形成の特質を解明しようとするものである。本年度ではとくに、N・エリアスの「文明化」論を基本的枠組みとし、第一次大戦期ジンメルの文化哲学および戦争論とルカーチの思想との関係について研究を行なった。その結果、20世紀政治思想の形成における「文化戦争」から「文化革命」への思想史的展開が明らかとなった。 大戦期ドイツ知識人における「西欧文明」対「ドイツ文化」という図式は、政治経済的に無力な教養市民層の避難所にして自己意識の源泉である「文化」概念を基盤にしている。19世紀末の急激な大衆化はそうした文化エリートたちにとって文化の危機を意味し、その中で戦争勃発は文化復興の好機と捉えられ(「文化戦争」論)、同時に、屈折した自己意識が敵国の「文明」へと投影される(「文明批判」論)。 ジンメルは、「文化」を「文明」と対立的に捉えず、文化的「疎外」は文化に内在的・本質的なものだという「文化の悲劇」を主張する。しかし、大戦勃発とともに彼もまた文化的疎外・悲劇の克服としての「文化戦争」を唱道し、文化概念を国民化する。 これに対してルカーチは、ロシア革命およびドストエフスキー研究に依拠して、戦争はあくまで「西欧」的であり、ドイツ文化もそこに含まれるがゆえに西欧文明の危機を克服しえないと主張し、西欧と異なる全く新しいものとして「ロシア」を捉える。こうして、ロシア革命において「国際的」文化が出現したという「文化革命」の構想が成立する。 以上の成果は論文「「文化戦争」から「文化革命」へ-第一次世界大戦期ルカーチにおける西欧・ドイツ・ロシアの連関」(投稿中)にまとめられ、また第10回政治哲学研究会(於:岐阜)で研究報告が予定されている。
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