2005 Fiscal Year Annual Research Report
中世における仏教と文学の習合について--密教僧栄海を中心として--
Project/Area Number |
04J02429
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Research Institution | International College for Postgraduate Buddhist Studies |
Principal Investigator |
佐藤 愛弓 国際仏教学大学院大学, 仏教学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 栄海 / 後宇多法皇 / 後醍醐天皇 / 東寺 / 勧修寺 / 真福寺 / 密教 / 和歌 |
Research Abstract |
今年度は研究対象である密教僧栄海の活動について、資料調査を行いつつ研究を進め、以下のような研究会発表、学会発表、論文発表をおこなった。 まず平成十七年八月、十二月、平成十八年三月の三度に亘って行った勧修寺調査においては、勧修寺聖教の目録データベースの作成作業を行った。その結果、栄海の活動がより詳細にわかるようになった。また八月に行われた東寺観智院の調査では栄海の記した修法記録を調査した。また名古屋市の真福寺においても、目録データベースの作成作業を進めるとともに、栄海の灌頂記録『応長元年具支日記』の調査を行った。 また七月には、これらの調査の成果を踏まえ、唱導文学研究会(於立命館大学)において「慈尊院栄海」という題で、研究発表を行った。また十一月には中世文学会(於琉球大学)において「慈尊院栄海における宗教と文学」という題で、研究発表を行った。この発表ではこれまでの聖教調査の成果を紹介しつつ、栄海の活動を総合的に考察し、彼の文学活動が、鎌倉末期から南北朝時代という時代状況や彼の宗教活動と深く結びついていたことを発表した。また『中世文学』五十一号に論文「慈尊院栄海における宗教と文学」を執筆した。この論文においては、学会での議論を反映させて、論を展開させ、栄海の文学活動とこの時代の密教僧の思想との関係を論じた。栄海は後宇多法皇、後醍醐天皇と深い関わりを持っており、栄海の文学活動には国家の危機とのそれに対する密教僧の意識が関わっていたと考えられる。また栄海の和歌活動の背景には、和歌を国家の言説として重んじる思想があったと考えられる。 これらの研究活動を通して慈尊院栄海と王権との関わりや、彼の思想および言語表現について考察を進めることができた。
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Research Products
(1 results)