2004 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼系における放射性核種を活用した物質循環及び環境変動解析に関する研究
Project/Area Number |
04J02574
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
坂口 綾 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 湖沼堆積物 / バイカル湖 / ウラン同位体 / トリウム同位体 / セジメント・トラップ / 琵琶湖 |
Research Abstract |
地球上に普遍的に存在するウラン(U)・トリウム(Th)は、元素による挙動の違いは勿論のこと、系列・物理的半減期・起源の違いなどにより同じ元素でも各同位体の挙動が異なることから、これらの事象を十分に把握することで有用な地球化学的プロキシになると考えられる。本研究では、ウラン濃度・^<234>U/^<238>U放射能比が高く、物理・生物データも蓄積しているバイカル湖の湖底堆積物(ca.60cm)を用いて、ウランの外来性と自生性成分の識別、逐次抽出法、有機物やBi-SiO_2など他成分との比較から、湖沼におけるウラン・トリウム堆積挙動に関する知見を得ることを試みた。堆積物コアは、現場で1cm間隔に切断し、各試料についてU・Th同位体の化学分離・α線測定、堆積年代解析のためのγ線測定(^<210>Pb、^<137>Cs法)、粒度測定、Bi-SiO_2含有量測定を行った。更にTessierの方法(イオン交換、Fe-Mn酸化物、炭酸塩、有機物、土壌フラクション)逐次抽出法に、MoltrockのBi-SiO_2フラクション抽出方法を併せて用い、U・Thの堆積物中での存在状態を検討した。湖水試料中のウラン同位体濃度も化学分離・α線測定で定量した。 堆積物ショートコアの体積速度は21.6mg/cm^2/y(excess-^<210>Pb法)と推定され,bulk試料の^<238>U、^<232>Th濃度はそれぞれ61.7-111.9Bq/kg、33.7-52.2Bq/kgの範囲で変動している(近年約2000年間)。堆積物中U抽出実験操作において、吸着フラクションに抽出される^<234>U/^<238>U放射能比が湖水のそれとほぼ等しいことから、この手法はウランの抽出実験において妥当であることがわかった。また、各抽出フラクションでのウランの割合を比較すると、炭酸塩、Fe-Mn酸化物フラクションでは全吸着ウラン濃度に対して約8割を占めており、従来報告されてきたBi-SiO_2への濃集は認められなかった。ロングコア(10m、約25万年カバー)の解析により、気候変動と吸着ウラン量の関係おいて氷期には吸着量が少なく間氷期には多いという比較的よい相関が見いだされたことから、ウランの除去メカニズム、ウラン・トリウム同位体の関係についてさらに解析することで、古環境復元のプロキシとしての利用、及び精度のよい年代測定法への応用が期待される。 現在、主としてロングコアの分析を進めるとともにアナログ的研究として琵琶湖にセジメント・トラップを設置し湖底に堆積する前の沈降物についても解析を行っている。
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