Research Abstract |
日本学術振興会特別研究員の1年目ということで,研究計画に沿った研究活動を行った.まず,CVD/真空蒸着連続プロセス装置を用いて,サブナノメートルスケール潤滑膜の塗布法の開発を行った.このとき,固定層,流動層ともに膜厚制御を行った.本研究に関しては現時点では開発途中の段階であり,具体的な研究成果報告は無いが,近く成果報告できると考えている.これに平行して,ディップ法で塗布した潤滑膜のナノトライボロジー特性評価として,ボールオンディスク試験による摩擦,摩耗,振動特性の測定を行った.その結果,ナノメートルオーダーの潤滑膜の摩擦,摩耗特性は,潤滑膜のボンド率(総膜厚に対する固定層の割合)が大きく関与していることがわかった潤滑膜の表面粗さは摩擦,摩耗に影響することがわかった.潤滑膜の表面粗さはボンド率を変えることである程度制御できることから,摩擦,摩耗に対する最適なボンド率を提案することができた.また,潤滑分子の凝集現象と摩擦との関係を定量化した.潤滑剤が凝集することにより摩擦特性が低下することから,一様な潤滑膜を長時間保持することで,良好な摩擦を維持できるがわかった.振動特性については,固定層はしゅう動子と被しゅう動面との直接接触を防ぐが,大きな振動低下効果は期待できないこと,流動層は振動低下に期待できるが不可荷重が大きくなると直接接触が起こり,その結果振動が大きくなることがわかった.また,最も振動を抑えることのできる,固定層,流動層の最適な組み合わせについても提案することができた.さらに,2分子層潤滑膜モデルとして,摩擦,摩耗特性を体系的にまとめることができた.
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