2005 Fiscal Year Annual Research Report
地震波の振動軌跡のモデル化と地下不均質構造推定への応用
Project/Area Number |
04J02634
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Research Fellow |
齊藤 竜彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地震波 / 地下不均質構造 |
Research Abstract |
地下の不均質構造によって地震波形は崩れ,振動軌跡の乱れや後続波群が励起される.この現象をモデル化し,これを利用した地下の不均質構造推定法を開発することが本研究の目的である.本年度は,振動軌跡の乱れに重要な影響を与える異方性不均質構造を想定し,その中での波動伝播特性を理論的に記述・導出した. (1)地震波エンベロープ ランダムな地下不均質構造による波の散乱現象によって,震源ではインパルス的であった地震波も,継続時間をもった包絡波形(波形エンベロープ)を形成する.波形エンベロープの理論的合成法として,マルコフ近似を用いた方法がある.従来,この方法は等方なランダム媒質の条件下で定式化されていた.本研究では,2次元の異方性をもつランダム媒質中の理論エンベロープ合成法を定式化した.その結果,地震波が鉛直下方から入射する場合よりも,水平方向伝播へ近いほど,主要動部がくずれ後続波群が発生しやすくなる.これらの現象は,数値シミュレーションでも確認され,定式化の妥当性を確認した. (2)地震波の実効的な伝播速度 地震波は高速度域を選択的に通過するため,ランダムな不均質構造中を地震波が通過する場合,速度値を空間平均した値よりも,波の実効的な伝播速度は速くなる.これまで,等方ランダムな地下不均質構造中における実効平均速度の導出法が提案されていたが,異方性をもつランダム不均質構造中の実効平均速度の導出は未完であった.本研究では,異方性をもつ2次元異方性ランダム不均質構造における地震波の実効的な伝播速度を,波動場の前方散乱近似を用いて理論的に導出した.その結果,地震波は鉛直方向よりも水平方向へ速く伝播するといった速度異方性を示し,その異方性の強さは高周波数になるほど大きくなることがわかった.
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Research Products
(2 results)