2004 Fiscal Year Annual Research Report
時間依存密度汎関数法による炭素系ナノ構造の非平衡電子状態の研究
Project/Area Number |
04J02793
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Research Fellow |
洗平 昌晃 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 電界電子放出 / 時間依存密度汎関数法 / グラファイトリボン / グラフェン |
Research Abstract |
グラファイトナノ構造体からの電界電子放射(FE)について、時間依存密度汎関数法を用いて研究した。グラファイトナノ構造体の中でもグラファイトリボン(GR)は、理論的に興味深い現象が予言されており現在盛んに研究が行われている物質である。GRの終端構造の違い(清浄端or水素終端)、または電界方向の違い(リボン平面に対して平行or垂直)によって、放射電流量の大小関係とFE特性を決める電子状態起源を調べた。電流量の大小関係は次の通りであった。(清浄端・平行)>(水素終端・平行)>(清浄端・垂直)>(水素終端・垂直)。電場をリボンに平行に印加した時も垂直に印加した時も、清浄端リボンのFEに対する電子状態起源はダングリングボンド(DB)状態であった。DB状態はGRの端に存在し真空側に突き出ているため、FE電流の重要な源になると考えられる。リボン端が水素で終端されることによって、DB状態は消失しσ軌道とπ軌道の電子がFEに寄与する。しかしながら、これらの軌道は結合にも寄与しているためDB状態ほど電子を放出することはできない。以前の研究から、軌道の方向と電界の方向が一致した時に、その軌道の寄与が大きくなることを明らかにしたが、垂直に電場を印加した時でさえπ軌道の寄与は非常に小さかった。この理由が、遮蔽効果によりπ軌道周辺の電界が弱くなるためであることを明らかにした。 GRの研究においてDB状態がFE電流を著しく増加させることがわかった。したがって、完全なグラフェンに原子空孔欠陥を作ると、そこにDB状態が出現しグラフェンのFE特性を大きく変えると予想した。そこで原子空孔欠陥を持つグラフェンに電界を垂直に印加したときのFEを調べた。予想通り欠陥内部に出現するDB状態により、グラフェンのFE電流は増加した。GRとグラフェンの研究から、DB状態はFEに重要な役割を果たすことが理解できた。
|
Research Products
(1 results)