2005 Fiscal Year Annual Research Report
時間依存密度汎関数法による炭素系ナノ構造の非平衡電子状態の研究
Project/Area Number |
04J02793
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Research Fellow |
洗平 昌晃 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 時間依存密度汎関数法 / 電界電子放射 |
Research Abstract |
時間依存密度汎関数法(TD-DFT)とリカージョン伝達行列(RTM)法の電界電子放射現象への適用性を調べるために、両第一原理手法を用いてNa表面からの電界電子放射を研究した。TD-DFTは波動関数の時間発展を直接追いかける強力な方法である。しかしながら、現状の計算資源でさえも長時間のシミュレーションが厳しいという難点を持つ。一方、RTM法は定常的な散乱過程を解析するために開発された。主に電子輸送現象やSTM等の系に適用されており、電界電子放射現象に関しての詳細な研究はほとんどなされていない。この両者の方法論的な違いに焦点を当てるため、単純金属表面であるNa表面を研究の対象として選択した。得られた知見は以下の通りである。 (i)放射電流値はTD-DFTよりもRTM法で見積もった方がより信頼できる。なぜならば、RTM法は定常的な電子トンネル過程を忠実に扱うのに対して、TD-DFTで得られる電流は本質的に非定常であり定常放射電流を求めることには適さないからである。ただし、TD-DFTであっても非常に長時間にわたるシミュレーションが可能であれば、放射電流値は正しく求められるであろう。 (ii)電界電子放射に寄与する電子状態を明らかにすることに関してはTD-DFTの方が適している。TD-DFTは全ての波動関数の時間発展を直接追いかけることができるので、放射に寄与する状態を確実に見つけることができる。それとは対照的にRTM法では、入射したエネルギーと(準)束縛状態が一致しなければその状態を見過ごす可能性がある。 以上から、TD-DFTとRTM法を相補的に用いることが電界電子放射の研究において理想的である、ということが提案できた。
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Research Products
(1 results)