2006 Fiscal Year Annual Research Report
時間依存密度汎関数法による炭素系ナノ構造の非平衡電子状態の研究
Project/Area Number |
04J02793
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Research Fellow |
洗平 昌晃 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電界電子放射 / 第一原理計算 / 電界蒸発 |
Research Abstract |
電界電子放射現象はナノスケールの電子源として期待されており,理論・実験ともに精力的に研究されている物理現象である.この現象は強電界・強電流下での量子トンネル現象であり、そのような状況下では放出先端構造が著しい損傷を受けることが実験的に観測されている。このことはナノスケール電子源の寿命と密接な関連を持ち,電界電子放射現象を利用した次世代デバイスの実現に関して非常に重要な問題である.そこで,電界電子放射現象下でのNa原子に働く力をリカージョン伝達行列法(RTM)を用いて研究した.RTM法は電界電子放射現象のみならず,原子架橋系での定常電気伝導の研究にも使われる第一原理計算手法である. この研究において,電界電子放射による原子蒸発の閾値電界強度を見積もることができた.その際,蒸発原子は有効的に負に帯電していることを明らかにした.蒸発原子が負に帯電することは,電界電子放射現象を起こす際に印加される電界の向きとは矛盾せず,過去に成された理論研究とも合致している.しかしながら,実際に電流が流れている状況下でこのことを示したのは本研究が初めてである.また,この研究で得られた興味深い知見は,"ポテンシャル曲線から理解される電界電子放射現象下での原子の蒸発メカニズムは,蒸発原子の有効電荷の符号と電界の方向を除けば,通常の電界蒸発現象と同じである",ということである.このことに関しては詳細な研究が行われる必要があるが,この研究は電界電子放射現象下での表面原子過程を理解するための足がかりになるものと考えられる.
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