2004 Fiscal Year Annual Research Report
開いた社会での共存はいかにして可能か?類人猿をモデルにした理論的研究
Project/Area Number |
04J02879
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀内 史朗 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ボランティア / 地域社会 / 猿害 |
Research Abstract |
霊長類におけるナワバリ制をテーマに研究を行った.複数の群れが直線上で領域を奪い合う状況を計算機実験で設定した。一手前に獲得した領域内では隣接群との闘争に積極的,外では消極的なブルジョワ戦略が,闘争に常に積極的なタカ戦略,常に消極的なハト戦略に対し有利になる状況を調べた.結果,高い群れ密度でブルジョワ戦略が有利なことが分かり,高密度環境下でナワバリ制が進化することを明らかにした.第20回日本霊長類学会大会,第38回数理社会学会大会で発表し,現在論文を執筆中である. 類人猿(ボノボとチンパンジー)からの,ヒトの協力的集団間関係の進化をテーマに研究を行った.エサが少ない場所で拡散するメスをめぐりオスが争う状況を計算機実験で設定した.集団間オス数格差が縮まり大集団が契約に妥協する必要条件を調べた.熱帯林でエサが多くメスが結集すると格差は変化しない(ボノボ).乾燥林でエサが少なくメスが拡散すると格差は拡大する(チンパンジー).サバンナで更にエサが少なくメスが非常に拡散すると格差が縮小しうることが分かった。第39回数理社会学会大会で発表し,現在論文を執筆中である. 来年度から行う予定の秋田県八森町サル追い上げボランティアに関する研究の予備調査を行った.異なる利害をもつ2集団(地元民とボランティア隊員)の交渉が友好的になる条件を明らかにすることで,人間社会における,開いた社会での共存のテーマを考察する予定である. 昨年度から行っていたチンパンジー・ボノボ社会の研究が出版され(Population Ecology誌),屋久島ニホンザルのオス間関係研究が受理された(Primates誌).密度とオス数に関する研究,群れサイズに関する研究を,それぞれEvolutionary Ecology誌,Journal of Theoretical Biology誌に投稿した.
|
Research Products
(2 results)