2004 Fiscal Year Annual Research Report
無神論イデオロギーから呪術・宗教信仰へ-ソ連崩壊とロシア人に関する民族誌的研究-
Project/Area Number |
04J02899
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Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
田中 潤子 (藤原 潤子) 東北大学, 東北アジア研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポスト社会主義 / 伝統復興 / 呪術 / 宗教 / ロシア / カレリア / ライフヒストリー / プロパガンダ |
Research Abstract |
本研究は、ソ連邦崩壊後のロシアにおける呪術・信仰実践を民族誌的に記述することを目的とするものである。2004年度は、ソ連崩壊後に書店で大量に販売されるようになった実用呪術書、呪術の話題が取り上げられている新聞などを集中的に収集した。このようなマスメディアを通した語りに加え、パーソナル・ヒストリー、村落部における語り、都市部における語りなどを資料として、ポスト社会主義ロシアにおける呪術の現状分析を行なった。ロシア社会はソ連時代、あるいはそれ以前に行なわれた近代化政策・無神論政策により、「呪術は迷信である」という言説を誰もが知る社会である。このような社会において、呪術の「伝統」がいかに創り上げられ、いかなる理由付けによってリアリティを持ったものとして人々に受け入れられるようになるのか、呪術知識がどのように広まっていくのか、呪術の復興が現代ロシアの社会的コンテキストとどう関わるのかという点に主眼を置いて記述を行なった。 上記と並行して、ソ連時代、特に革命期から1940年代におけるフォークロアの政治的利用に関する文献資料の収集にも努めた。当時フォークロアは、階級闘争、反宗教政策、コルホーズ化運動、工業化、突撃作業運動など、社会主義建設を鼓舞するための道具として積極的に利用された。時には政治的プロパガンダに供するために、フォークロアの人為的改作あるいは創造も行なわれた。このような事実の詳細な把握は、ソ連時代に破壊された伝統文化を復活させようという現在の動きの背景を理解する上で欠かせないものとなるはずである。
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Research Products
(4 results)