2005 Fiscal Year Annual Research Report
無神論イデオロギーから呪術・宗教信仰へ-ソ連崩壊とロシア人に関する民族誌的研究-
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04J02899
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Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
田中 潤子 (藤原 潤子) 東北大学, 東北アジア研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | ロシア / カレリア / フィンランド / ポスト社会主義 / ロシア正教 / ルーテル派教会 / 人道支援 / 言語政策 |
Research Abstract |
本研究は、ソ連崩壊後のロシアにおける宗教をめぐる状況を民族誌的に記述することを目的とするものである。 平成17年度は、(旧)社会主義国および社会主義的な理念に基づいた運動を研究対象としてフィールドワークを行なっている研究者と共に、日本文化人類学会において「ポスト・ユートピアの民族誌」と題する分科会を行った。ここでは、ユートピアや社会主義思想のような近代的な社会正義の夢と、それに基づいて編成された社会をどのように民族誌として記述するかについての議論を行った。分科会の成果は、『ポスト・ユートピアの民族誌』(2006年)にまとめられ出版されている。 さらに本年度の後半は、ロシア連邦カレリア共和国の一村落において、約6ヶ月間のフィールドワークを行なった。調査の主な目的は、ソ連崩壊後のロシア正教の復興状況、及び外国からの各種宗教の布教状況を把握することにあった。その結果、経済的困難によってロシア正教の復興が遅れている一方で、フィンランド・ルーテル派教会が活発な布教活動を展開していること、現地のロシア正教徒がルーテル派教会の礼拝に頻繁に参加するという特異な現象が観察されることが明らかになった。 このような現象を多角的に理解するために、今回の調査では、現地の日常生活に見られる隣国フィンランドとの関係についての記述も合わせて行った。その具体的な内容は、ソ連崩壊後の経済状態の悪化と90年代初頭から始まったフィンランド人による人道支援、フィンランドへの進学と出稼ぎ、フィンランド教育省の支援に基づくカレリア語・フィンランド語教育の実態などである。
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Research Products
(1 results)