2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J02932
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井出 知之 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 階層意識 / 社会階層 / 階層帰属意識 / 社会的認知 / 社会意識 / 自由回答法 / 計量社会学 / 社会調査 |
Research Abstract |
研究計画書に従い、問題の整理及び予備調査を行った。研究計画書で述べたように、これまでの研究の問題点の中でも、測定せずに理論的に仮定する変数が多すぎたことが注目できる。そこで、測定の弱さに対して「階層帰属意識」という概念に代わりうる諸個人が自分の階層的位置を定める意識概念を独自の社会調査を通じて構築することとした。 第一に、階層構造の認知において社会的地位に関する知識がどのように収集されるのか、という問題が挙げられる。具体的には、階層意識が形成される際にどのような社会的資源が重要なのかという論点と、それら情報がどのような過程で収集されるのかという問題が挙げられる。後者はプロトタイプモデルとエグゼンプラーモデルによって典型的にモデル化される。 第二に、認知された階層構造が具体的にはどのような構造を持っているのか、という問題である。ここには階層構造の範囲が全体社会か部分社会かという論点と構造の形式的特性の論点、そして階層の数は有限か無限か、という問題が含まれる。形式的特性については地理学的地層のアナロジー、辞書的配列、多次元混交といったモデルが考えられる。 第三が自己の位置づけの仕方の問題であり、ここには既存の比率尺度・間隔尺度論、現在との比較と過去との比較論などが含まれる。 予備調査では情報収集過程の論点と全体社会・部分社会の問題の論点、現在・過去との比較論に特に注目し、測定尺度を得るために自由回答形式を中心とするアンケート調査を仙台市において繰り返し行った。その結果、収入においては意識しない人々、消費や教育投資において意識するケース、親戚や近隣との比較への言及がそれぞれ代表的であった。さらに、生涯にわたる収入の予測に基づく認知が多く見られた。また、学歴については履歴書作成時に意識されることが多く、具体的人間関係や社会全体との比較などは顕著ではなかった。これらを元に測定尺度の検討を進める。
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