2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J02932
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井出 知之 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 階層意識 / 認知過程 / 社会調査 / 階層構造 / 階層帰属意識 |
Research Abstract |
階層に関する認知を決定する際の基準とそれら基準がどのような要因に規定されているのかを調べることが目的である。このために昨年度行った質問紙調査「生活実感に関する意識調査」のデータを分析した。残念ながら階層任官する認知のなかで階層帰属意識に特定して基準を調べるところまでは行かなかったが、広い階層に関する認知を決定する基準について分析した。 階層に関する認知を決定する際の基準としては、質問紙の選択肢を絶対的な基準と周囲の他者との比較、社会全体との比較の3値にコウドした。すると、収入と暮らしに関する認知を決定する基準として絶対的な基準が多く社会全体との比較がそれについだ。だが、くらしに関する認知においては周囲の他者との比較の影響がみられたととは注目すべきであろう。なぜかな社会全体の構造として定義される社会階層に対して、階層意識には周囲の他者という極めてミクロな社会関係に置いて形成される面があったと言うことになるからである。 基準を規定する要因としては、この上述の興味深い特徴がある暮らしに関する認知を規定する要因に着目した。人的資本論の立場からは高学歴によって視野が広いほど周囲の他者に拘らなくなると考えられる。また社会関係資本論からは職業的地位が高いほど交際の範囲が広がって周囲の他者の影響を受けなくなると考えられた。だが、学歴、職業そして収入も含めて階層的地位の影響は見られなかった。基準はむしろ独自のメカニズムが働いていると言えよう。その例として年齢が影響していた。これは老後が不安になる高年齢になると絶対的な基準が影響しやすくなっていると解釈できる。階層帰属意識との関係をみると、下になるほど絶対的基準が影響していた。これは生活が苦しいと階層構造というものは意識されにくくなることによると考えられる。 なお、2006年第43回数理社会学会大会にて上記内容は報告した。
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