2004 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツにおけるローカル市民イニシアチブの現代的展開-反対運動から地域自治へ-
Project/Area Number |
04J03065
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 聡子 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 反原子力運動 / 市民イニシアチブ / 運動フレーム / 敷地占拠 / 「地元」住民 / オートノミー / アイデンティティ形成 |
Research Abstract |
今年度は、ドイツ国内の原子力関連施設の諸立地点において現地調査をおこないドイツ反原子力運動の潮流をまとめた。なかでも、1981〜1989年に展開された「ヴァッカースドルフ使用済み核燃料再処理施設反対運動」に着目して重点的に資料を収集し、その展開過程を分析した。今年度の特別研究員奨励費は、主に、反対運動の担い手へのインタビューや、1980年代のローカル紙、反対運動団体機関誌、個人の手記など日本では入手困難な調査資料の収集費に当てられた。調査によって明らかになったのは以下の二点である。 第一に、反原子力運動の中心地が推移してきたことである。ドイツでは1970年代以降、連邦各地で原発建設反対運動が展開されてきた。なかでも、1974年以降、今も運動が続けられているゴアレーベンは、現在、連邦全土の運動家を惹きつける反原子力運動の中心地である。だが、それは運動開始以降一貫していたわけではない。1970年代前半のヴィール、ブロックドルフを経て1970年代後半にゴアレーベンへと移った反原子力運動の中心地は、1980年代後半にヴァッカースドルフへと移り、当地の運動が世論の注目を集めた。 第二に、連邦全土の中心地として運動が盛り上がるにつれて浮上した暴力問題と、それに対する地元の反応である。ヴァッカースドルフの反対運動では、運動の担い手団体が、住民たちの地域への「思い」をくみ取りながら住民への働きかけをおこない彼らを運動に取り込んでいった。それでも暴力的な若者の受け入れに否定的であった地元住民の姿勢を変化させた直接的な契機は、担い手団体の働きかけではなく、敷地占拠での実体験であった。占拠地で警察隊と対峙した住民たちは、暴力的な若者と同様に自分たちも国家権力から敵対視されていることを実感した。住民たちは、自らの正当性をも揺るがしかねない複雑な感情を抱きながらも暴力的な若者への共感を強めていったといえよう。
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Research Products
(1 results)