2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J03197
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 太郎 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ジョセフソン効果 / アンドレーエフ反射 / 量子計算 / 巨視的トンネル効果 |
Research Abstract |
本年度は、以前から取り組んできたアンドレーエフ反射の理論を発展させ、金属的な系におけるジョセフソン効果を量子計算素子(量子ビット)に応用することで、多くの利点をもつ新奇な量子ビットを実現可能であるという提案を行った。強磁性ジョセフソン接合では、系に形成されるアンドレーエフ束縛状態がスピン分裂するため、ジョセフソン電流の位相依存性が通常のジョセフソン接合での依存性からπだけずれる。これをπ接合と呼ぶが、特に金属的なπ接合の場合、電流の位相依存性が通常の正弦波的なものからずれた振る舞いを示す。我々はこの金属的なπ接合と通常のジョセフソン接合(0接合)を含んだ超伝導リングを考え、この系におけるポテンシャルがπ接合と0接合の競合により、位相空間において縮退した2つの最小値をもつことを示した。そしてこの2つの状態間の量子的なトンネル効果により結合・反結合状態が形成されるが、我々はこれらの状態を量子計算のための量子ビットとして用いることを提案した。さらに、これらの状態をマイクロ波共鳴によって制御し、周囲に配置した超伝導量子干渉素子(SQUID)により状態を検出可能であることを示した。また多量子ビット間の磁気的な相互作用により、ユニバーサルな量子ゲートの構築も可能であることを示した。従来の超伝導量子ビットには、ビットの形成に定常的な外部磁場が必要であるという問題点があったが、この量子ビットはπ接合を用いることでビットの形成に外部磁場を必要としないという大きな利点がある。さらに、外部磁場を必要としないため、系のサイズをさらに小さくすることが可能であり、そのことで周囲の環境との結合によるデコヒーレンスの効果が抑制されることが期待される。
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