2005 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴ骨格を用いた熱帯域における微量化学物質による海洋汚染の精密復元に関する研究
Project/Area Number |
04J03245
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 麻夕里 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 西太平洋 / サンゴ骨格 / 鉛 / ICP-MS |
Research Abstract |
人為起源の鉛は,有鉛ガソリンの使用,石炭燃焼や鉛・銅などの鉱山の採掘など主に工業化に附随して放出されることが知られているが,近年アジアにおいて工業起源の鉛の放出量が増加していることが指摘されている.前年度の研究から、西太平洋においては大陸起源の鉛が外洋表層まで広がっていることが明らかにされている。そこで今年度はサンゴ骨格を用いて,アジアから排出される汚染物質の影響を強く受ける西太平洋表層における鉛の時系列変動を明らかにした.試料は海南島,小笠原,ジャカルタ湾から採取されたサンゴ骨格(Porites sp.)を用い,過去それぞれ約10年間,100年間,70年間の鉛濃度変動を復元した.サンゴ骨格中の鉛濃度の測定はICP-MSを用いて行い,サンゴ標準試料であるJCp-1の15回の繰り返し測定による誤差は2.3%だった. サンゴ年輪に沿った鉛の測定結果からは,小笠原,ジャカルタ湾ともに過去それぞれ100年,70年において鉛濃度が上昇傾向にあった.このことから,アジア大陸から西太平洋,インドネシア各都市からジャワ海へと放出されている人為起源の鉛が,過去70年以上にわたって増加し続けていることが明らかとなった.特に小笠原のコアからは、1950年以降に鉛濃度の急激な上昇が見られ、これは日本を始めとするアジア各国における工業化のためと考えられる。また海南島のサンゴ骨格からは,1997年に急激な鉛濃度の減少が見られた.中国沿岸部では1997年から無鉛ガソリンの導入が行われ始めたので,この無鉛ガソリンの導入に対応して,サンゴ骨格中の鉛濃度が減少したことが示唆された.
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Research Products
(2 results)