2004 Fiscal Year Annual Research Report
アスペルギルス属カビの高浸透圧応答シグナル伝達系に関する研究
Project/Area Number |
04J03318
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古川 健太郎 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アスペルギルス属カビ / シグナル伝達 / 高浸透圧応答 / HOG経路 / 抗真菌剤 |
Research Abstract |
アスペルギルス属カビは、産業上有用なAspergillus oryzaeやA.nigerなどの他に、病原性を有するA.fumigatusやA.flavusなどが存在し、カビ特異的に効くシグナル作動性の抗真菌剤の開発が求められている。私は、アスペルギルス属カビのモデル生物であるA.nidulansの高浸透圧応答経路(AnHOG経路)に着目し、AnHOG経路のシグナル伝達機構の全容解明とこの経路を標的とした新規抗真菌剤のスクリーニング系の開発を目的としている。そこで、平成16年度は以下の2点について主に研究を進めた。 1)AnHOG経路構成遺伝子破壊株の造成と表現型解析 これまで取得したヒスチジンキナーゼTcsB、レスポンスレギュレーターSskA、MAPK HogAの遺伝子破壊株に加えて、リン酸基仲介因子YpdA、MAPKKK SskB、MAPKK PbsB遺伝子破壊株を造成した。高浸透圧培地における破壊株の生育観察及びHogAの活性化レベルの解析によって、AnHOG経路は酵母HOG経路と異なり、二成分性情報伝達系依存的に活性化されることを明らかにし、この原因の一つにPbsBの活性化機構が酵母のPbs2pと異なることを示した(Mol.Microbiol.2005.in press)。また、ypdA遺伝子破壊株は、AnHOG経路の撹乱を引き起こし顕著な生育阻害を示したことから、抗真菌剤の標的になり得ることがわかった。さらに、YpdAを標的とした薬剤スクリーニング系を構築した。 2)DNAマイクロアレイを用いたカビの高浸透圧応答遺伝子群の網羅的解析 A.nidulansの野生株とhogA遺伝子破壊株の塩ストレスに対する応答遺伝子群をDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。野生株においてはタンパク質分解に関わる遺伝子群が多く発現しており、hogA遺伝子破壊株においては細胞死に関わる遺伝子の発現が見られた。また、hogA遺伝子破壊株に高浸透圧刺激を与えたところMAPK MpkBが活性化されたことから、hogA遺伝子破壊株において発現上昇していた遺伝子群の一部はMpkB依存的であると予想された。また、クラスタリング解析を行い、AnHOG経路(HogA)依存的に発現制御を受ける遺伝子群を明らかにした。
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