Research Abstract |
前年度までに,理論的に電子サイクロトロン共鳴に関与しないとされてきた左旋偏波が,共鳴点近傍での偏波方向反転により共鳴点で吸収されることを実験的,理論的に明らかにしてきた.この左旋偏波減衰の電子加熱,非線形電位構造形成に対する影響を調べたところ以下のことが明らかになった. 1.電子サイクロトロン共鳴加熱に伴う電位形成実験で必要となる,メッシュ形状電子源を導入したイオンフロー制御型プラズマ源を開発し,磁化プラズマ中の沿磁力線イオンフローエネルギーを高精度に制御した. 2.左旋偏波を選択的に励起するための大電力円偏波入射用アンテナとして,偏波器付きホーンアンテナを設計・製作し,電波暗室にてその特性評価を行い,軸比1.1の円偏波が得られることを確認した. 3.上記1の方法で生成したプラズマ中へ,上記2の偏波器付ホーンアンテナで大電力右旋偏波を過渡的に入射し,その際のプラズマ密度,プラズマ電位,電子温度の空間分布を静電プローブ法により測定した.その結果,電子サイクロトロン共鳴点近傍において,非線形電位構造,すなわちダブルレイヤー(電気二重層)が形成されていることが明らかになった. 4.上記3の実験において,右旋偏波,左旋偏波を入射したときの非線形電位構造を測定したところ,右旋偏波入射時は中心領域で,左旋偏波入射時は周辺領域でのみダブルレイヤーが形成されていることが,明確に観測された. 5.上記3,4において観測されたダブルレイヤーの電位障壁の値は,電子とイオンの密度が等しい,すなわち電気的中性条件を満足するように,自己組織化的に決定されていることが明らかになった. 6.偏波器付きホーンアンテナでマイクロ波を励起した場合には,周辺領域における波動の偏波は,励起した波動と逆向きなることを理論的に示した.すなわち,右旋偏波入射時には中心領域で,左旋偏波入射時には周辺領域で右旋偏波となり,上記4で観測されたダブルレイヤーの空間構造は,右旋偏波領域でのみ形成される可能性を示唆している. 7.大電力マイクロ波を入射した際には,その電磁波と,プラズマ中に存在する静電波が相互作用し,周波数が異なる電磁波が放射されていることを観測した. 8.これまでに実験で観測し,理論的に提唱してきた左旋偏波から右旋偏波への偏波方向反転のメカニズムをより詳細に検討するために,有限要素法を用いた1次元波動解析コードを用いてシミュレーションを行い,偏波方向反転が起こることが明らかになった.
|