2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J03431
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内山 馨 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | シクロテトラシレン / テトラシラ-1,3-シーエン / Woodward-Hoffmann則 / 電子環状反応 / ビシクロ〔1.1.0〕テトラシラン / 協奏反応 / 原子価異性化反応 / [2π_s+2π_a] |
Research Abstract |
二重結合ケイ素上に^tBu基を有するシクロテトラシレン1は、熱異性化反応によって対応する2種類のビシクロテトラシラン2および2'へと異性化した。異性化のメカニズムを考察したところ、シリル基の1,2-転位反応で1から2'への異性化反応を説明することができるが、2への異性化を説明することができない。この1から2への異性化反応は、骨格異性化反応を考えると説明できる。すなわち、Mullerが提案したテトラシラブタジエンを経由する多段階の電子環状反応(機構1)あるいはWoodward-Hoffmann則に従った協奏的な[2π_s+2π_a]環化反応(機構2)を考えると説明できる。 シクロテトラシレン1から2への異性化反応のメカニズムを詳細に検証するために、速度論解析および理論計算を行った。速度論解析の結果、活性化パラメータはΔH【thermodynamics】=24.4±0.3kcal/mol、ΔS【thermodynamics】=-4.0±1.2kcal/mol・Kと見積もられた。この負のΔS【thermodynamics】は遷移状態が束縛された構造を有していることを示す。またこの反応について理論計算を用いて考察したところ、機構2は実現可能な機構であり、エネルギー的に機構1よりも有利であることがわかった。すなわち、機構2の活性化エネルギーは38.4kcal/molと算出され、これは多段階の機構1の活性化エネルギーよりも低い(活性化エネルギー=47.3kcal/mol)。したがって1から2への異性化反応は、Scheme 1に示すようなWoodward-Hoffmann則に従った協奏的な[2π_s+2π_a]環化反応で進行するものと考えられる。これは、速度論解析で求めた負のΔS【thermodynamics】と矛盾しない。この1から2の異性化反応は、テトラシラシクロブテンの電子環状熱的異性化の初めての例である。また理論的に予測されていたシクロブテン骨格からビシクロブタン骨格への電子環状反応を実験的に初めて見出した例であり、興味深い。
|
Research Products
(1 results)