2004 Fiscal Year Annual Research Report
極超短パルスレーザー誘起電子・核波束動力学理論の開発とその化学反応への応用
Project/Area Number |
04J03435
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 幸男 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強レーザー場 / 時間依存断熱電子状態 / 強レーザー場誘起非断熱遷移 / 分子内電子移動 / 化学反応機構 / 核波束 / 時間依存シュレーディンガー方程式 / サイクル平均 |
Research Abstract |
強レーザー場中の分子の核波束ダイナミクスのシミュレーションと解離反応機構の提案 時間依存断熱電子状態という強レーザー場中での電子状態の記述に有効な概念を用いて時間依存シュレーディンガー方程式を解き、強レーザー場中でのエタノール分子の解離反応等を解析した。さらに強レーザー場中での化学反応機構の理解に有効な以下のような概念を提案した。また新規なダイナミクスを発現する条件について検討した。 (1)強レーザー場誘起非断熱遷移 レーザー電場照射時の断熱電子状態間の交差と非断熱遷移が板倉らによって報告された強レーザー場中のエタノール分子の解離反応の理解に必須であることを明らかにした。この非断熱遷移はレーザー電場の時間変化に対する電子運動の非断熱性に起因し、時間依存断熱状態を用いることで得られるものである。 (2)サイクル平均によるパルス長依存性、振動数依存性の解釈 エタノール分子のC-C結合とC-O結合の解離分岐比が照射するレーザーのパルス長に依存し、800nm付近の波長数領域ではダイナミクスがレーザーの波長に依存しないこと、サイクル平均という概念を用いることでこれを説明できることを示した。 (3)新規ダイナミクスを発現するパルス波形・分子の検討 実験で使われたレーザーパルスよりもバンド幅の広いレーザーや、振動数領域を高振動数側にシフトさせたパルスを適用してエタノール分子のダイナミクスを計算した結果、新規なダイナミクスを発現させるにはレーザーの波長が電子的に共鳴な領域に存在することが必須であることを明らかにした。これは共役系のような共鳴振動数が小さい分子であれば800nmの波長領域でチャープの符号に依存する新規なダイナミクスが起きる可能性があり、ひいては化学反応制御にも応用できる可能性がある。
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Research Products
(1 results)