2006 Fiscal Year Annual Research Report
極超短パルスレーザー誘起電子・核波束動力学理論の開発とその化学反応への応用
Project/Area Number |
04J03435
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 幸男 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近赤外強レーザー場 / 時間依存断熱状態法 / 強レーザー場誘起非断熱遷移 / 振動核波束動力学計算 / 分子ダイナミクス / 多自由度の振動自由度 / 分子内回転 / 電気陰性度 |
Research Abstract |
本年度はこれまでに開発した理論を多自由度の振動自由度を持つ系や水素原子のダイナミクスへ適用し、下記のような近赤外強レーザー場中での分子ダイナミクスに関する新たな知見を得た。 ・多自由度の振動自由度を持つ系への拡張 時間依存断熱電子状態上で古典トラジェクトリ計算を実行することで、多自由度の振動自由度を持つ系のダイナミクス計算が可能となった。本手法を用いてエタノール1価カチオン分子や1-プロパノール1価カチオン分子においてOH基の分子内回転がレーザー電場によって抑制されることを明らかにした。 ・C_<60>フラーレン分子への適用 C_<60>分子の12価カチオンにおいて振動核波束動力学計算を実行し、1800nmの波長を持つレーザー光照射時に分子振動の運動エネルギーとして10eV超の運動エネルギーを分子が獲得してもなお、分子が壊れずに存在することを明らかにした。 ・強レーザー場中における水素原子のダイナミクス 強レーザー場中での水多価カチオン分子の超高速ダイナミクスを解析し、20fs程度の超短パルスを水分子に照射したときの反応機構を明らかにした。時間依存断熱状態法が水分子内の水素原子のように高速で運動する場合においても適用可能であることを確認できた。 ・強レーザー場中における解離反応の解離収率を予測するための定性的な理論 1-プロパノール分子がエタノール分子と同様にC-0結合伸張時に強レーザー場誘起非断熱遷移を起こす結合長がC-C結合のそれよりも長いこと、その結果として解離収率をあげるにはより長いパルス長を必要となることを明らかにした。強レーザー場誘起非断断熱遷移を起こす結合長の違いは原子の持つ電気陰性度の違いに由来する。この結果は分子の骨格を形成する原子の電気陰性度から解離収率のパルス長依存性を予測できる定性的な理論が構築可能であることを示唆している。
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Research Products
(2 results)