2004 Fiscal Year Annual Research Report
異種の卵細胞質を利用した初期化誘導法によるラット体細胞クローン個体の作出
Project/Area Number |
04J03474
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Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
富岡 郁夫 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ラット / 体細胞クローン / 核移植 / 連続核移植 / 初期化 / 異種の卵細胞質 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
現在行われている核移植によるクローン技術では、核移植後の核の初期化をどのように誘起するかが重要とされている。すなわち、ドナー細胞の細胞周期、レシピエント卵子にMPF活性の高い未受精卵子を用いること、胚移植時の仮親との同調性、またはドナー細胞の種類などが動物種によって異なるものの、クローン個体の作出に重要であることが指摘されている。そこで、本研究は核移植後の染色体の再構築に関わる因子、特に細胞分裂装置および細胞骨格系に関与するものを解明し、核移植された染色体の初期化および分配を正常に誘起し、さらに1細胞から2細胞に分裂する際に観察された偽極体放出を防止する方法を確立することを目的としている。比較として行った実験でマウス核移植胚を作製し調べた結果、マウス卵細胞質は細胞骨格が豊富で分割能力に優れ、移植した染色体が正常に分配されることがわかった。そこで、ラット核をマウス卵細胞質に入れて核移植胚を作製し1細胞あるいは2細胞期に発生させる。次に、この発生した胚から核を取り出し、除核したラット1細胞期胚の卵細胞質に入れる。この操作手順により、核移植胚由来の1細胞あるいは2細胞期胚を作出した。 体外での2細胞期までの発生率は43%と、従来の方法と比較して有意な差は認められなかった。操作手順が非常に複雑化した影響が大きくなったと考えられる。しかしながら、作出された胚は形態的に非常に綺麗で、受精胚と比較しても遜色はなかった。今後、分子生物学的に初期化の状態を解析し、同時に胚移植も行い、産子獲得を目指す。 また現在、ドナー細胞の初期化に注目し研究を進めている。レシピエント卵子内に注入する前の段階、すなわち体外培養の段階から、異種の卵細胞質抽出物をもちいて十分に初期化し、その細胞を用いて核移植を行っている。
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