2005 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期からの移動のネットワークと奄美・沖縄文化の形成について
Project/Area Number |
04J03540
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
本山 謙二 千葉大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 奄美 / 干刈あがた / 三池炭坑 / 島原の子守唄 / 鹿児島市 / 奄美コミュニティ / ラジオ / メディア |
Research Abstract |
今年度当初の研究計画書において、「これまでの研究成果のまとめとして学会報告、及び学会誌等への執筆が主な作業になる」と記した。そしてその成果が、論文5本(共著2冊を含める)と学会報告1回という成果となり、全体的に見て、計画通りの研究実績となった。では、具体的な研究成果について、それを時系列に振り返りながら報告する。 まず、論文自体は前年度提出になるが、鹿児島大学・奄美プロジェクトから依頼された「奄美からの出郷者たち」の論文が掲載されたニューズレターが刊行となった。これは、これまでの研究関心である奄美の和泊町出身の両親を持つ、「2世」作家干刈あがたを中心に論じながら、さらに移住という観点から、沖永良部島と与論島から三池炭坑への移住者についても、これまでの研究成果に加え、新たな成果を加え、補足的に論じたものである。 7月2日(土曜日)には、立命館大学・衣笠キャンパス(以学館)で開催された、文化研究者を主体としながらも様々な人々が報告やパフォーマンスを行う「カルチュラル・タイフーン2005京都」の「セッション12」において報告を行った。なおこの報告は、「同じ場所の二つの唄」『音の力アジア臨界編(仮題)』(インパクト出版会)として、来春刊行される予定になっている。報告の内容及び、刊行予定(脱稿済)の論文の内容は、これまで筆者は、三池炭坑での与論島からの移住者の「唄」について論じてきたが、今回は、逆にそうした奄美の人々などを受け入れる側の人々の「唄」である『島原の子守唄』に焦点をあてるとこで、1920年代ごろの島原、大牟田地方の歴史や文化を論じた。これは、これまでの研究の視点を大きく広げるものになった。 そして9月には、鹿児島市の出版社から、研究者や地元の地方史家などとの共著である『奄美戦後史』が刊行され、そこに「鹿児島市のシマ」という論文が掲載された。これは鹿児島市における奄美出身者のコミュニティの、主に敗戦後から現在までの歴史について書いたものであり、私の研究全体の観点から言えば、これまで触れていなかった地域の歴史であり、今回の成果により研究の幅を広げるものとなった。 さらに3月に刊行される予定である『現代思想』に「身体が覚えている音」という論文を提出した。これは現代のラジオについて、主にバラエティ番組を対象とし、昨今のラジオをとりまくメディア状況もふまえ、それを芸能論的な観点から論じたものある。これは、専門分野であるメディア論を深める成果となった。このように今年度は、主に論文の執筆という点で大きな成果をあげることができた。来年度は最終年度となる。さらなる研究成果をあげることができるように努力したいと思っている。
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Research Products
(5 results)