2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J03571
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
谷川 卓 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 因果性 / 反事実条件法 / 出来事 / 可能世界 / 法則 / 性質 / 説明 / 責任 |
Research Abstract |
今年度は、因果性の概念をめぐって現在係争中にある諸問題を、反事実条件的分析における出来事理論の位置づけを明確にするという観点から整理すること、およびその解決案を提出することを目的として研究を行った。この研究の成果としては、因果関係の報告は語用論的影響を受けているために存在論的関係がストレートに表現されているわけでないこと、および問題のほとんどはそのことに起因していることを確認した。具体的に扱った問題はつぎである。 ・因果的先回り問題 従来、因果的先回りケースは反事実条件的分析に対する反例とされてきた。それに対して、これまでの研究では因果関係の項とされる出来事の存在論が不明確であったこと、よって適切な出来事理論を採用すれば問題は解決可能であることを指摘した。この内容については論文「因果的先回りケースにおける因果関係」を準備中である。 ・"ネガティヴな出来事"が関与するケース いわゆる"ネガティヴな出来事"は因果関係に立つ存在者ではないという見解に立ち、"ネガティヴな出来事"が関与するケースを反事実条件法によって捉えるアプローチに制約を加えることで説明した。また、このことが「不作為」や「抑止」といった責任帰属が問題となるケースとの関連性についても論じた。この成果は、関連する発表を2004年度の科学基礎論学会で行い、現在はその内容に基づく論文「"ネガティヴな出来事"と因果関係」を準備中である。 ・因果関係の推移性をめぐる問題 因果関係は形式的に推移的な関係だとされているが、因果性に関する日常的な表現のなかにはそれに反するように見える表現がある。そのようなケースについて、推移性が認められないように見えるのは語用論的要因によることを確認した。関連する論文を現在準備中である。
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