2006 Fiscal Year Annual Research Report
乳児の聴覚情報処理の発達と言語機能の発現;事象関連電位による研究
Project/Area Number |
04J03621
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
工藤 紀子 千葉大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 乳児 / 発達 / 事象関連電位 / 言語 |
Research Abstract |
音列をまとまりごとに区切る分節化は,乳児の言語獲得にとって重要な能力である。発話音列中に含まれる手がかりを用いて,単語ごとに区切り,ことばを獲得していくと考えられる。これまでに振り向き選好法を用いた行動実験により,およそ生後7〜10ヶ月頃の乳児は,ストレスパタン,音韻規則などの手がかりを用いることが可能で,また8ヶ月の乳児は統計的学習による分節化が可能であるとの報告がある。 統計的学習とは,音間の遷移確率の違いを学習することで,これを手がかりに音列を分節化するものである。我々は,統計的学習が分節化の中で原初の手がかりであると考えた。ヒトはいつから行うことが出来るのかより客観的に検討するために,生後3日以内の新生児を対象に脳波を記録し事象関連電位を測定した。 非言語音である純音を用いて単語と呼ぶまとまりを数種類作成し,これをランダムに並べて音列を作り,数分間繰り返し聞かせた。この結果,各単語の最初の音に対してのみ,前頭部付近で陽性の電位が得られた。単語の切れ目に対する振幅の増大は,新生児が,遷移確率をもとに統計的学習を行い,分節化によって連続音声に含まれる単語を検出できたことを示している。すなわち,統計的学習能力は普遍的かつ生得的な能力であることが示唆された。 また,この後10ヶ月齢までの発達を検討したところ,5ヶ月前後で陰性の成分が出現し,8ヶ月齢以降に安定した陰性成分を得ることができた。本結果は,およそ8ヶ月頃に脳が成熟し,分節化に関連する脳活動が安定することを示唆するものである。 さらに言語音を用いて生後1ヶ月〜10ヶ月齢を対象に実験を行ったが,純音刺激課題の直後に行ったために反応は得られなかった。
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