2004 Fiscal Year Annual Research Report
ナビゲーション行動をモデルとした「補償的情報処理機構」の解析
Project/Area Number |
04J03679
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Research Fellow |
弘中 満太郎 国立大学法人浜松医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ナビゲーション / 定位 / 帰巣 / 複眼 / 太陽コンパス / 情報処理 / 節足動物 / 亜社会性 |
Research Abstract |
動物行動の情報処理機構に関するこれまでの研究では,特定の環境に対する単一の情報処理系が扱われてきた.しかし実際には,非常に単純な情報処理機構をもつとされる動物においてさえ,時空間的に変動する多くの情報を利用し,別々の情報に重みづけをする補償的な処理系を介して実効的に一つの行動を達成している.このことから私は,動物は「補償的情報処理機構」を獲得することにより環境適応しているという視点から生物現象を理解する必要があると考えている.ベニツチカメムシの視覚および嗅覚を用いたナビゲーション行動をモデル系として,本研究では複数の情報処理系が階層的あるいは並列に存在している「現実の行動様式」を理解することを目的としている. 本年度は,太陽コンパスを用いた場合のナビゲーション行動について研究を進めた.太陽を模した光源を提示した実験空間における歩行速度,定位精度などの行動要素の測定,太陽を検出する複眼の外形的特徴の解析,複眼における個眼間角度等の組織学的解析,物理的環境計測として太陽の経時的移動の測定を行った.それらの結果から,後方に光源が位置する場合,行動的に補償することで軌跡が交互に転向するという発見を中心として,太陽の位置に伴った太陽コンパスの情報処理における変異を定量的に把握することができた. 本研究では,なぜ動物は複数の情報処理機構を並列に有し,外環境の変化に伴い階層性が表れるのか?という問題に対する理論的枠組みと実験的検証モデルを構築することも重要な目標である.国内外の定位行動の研究者と議論することで,ナビゲーション行動における「補償的情報処理機構」解析の大まかな検証モデルを考案した.これまでのナビゲーションにおける複数のcueの検証モデルでは,すべて180°のcueの対置的な提示が行われてきたが,新しい検証モデルではcueを90°に方向変位させ,加えてベクトル量を測定する実験系を提案するものである.
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Research Products
(5 results)