2005 Fiscal Year Annual Research Report
ナビゲーション行動をモデルとした「補償的情報処理機構」の解析
Project/Area Number |
04J03679
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Research Fellow |
弘中 満太郎 浜松医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ナビゲーション / 定位 / 帰巣 / 複眼 / 経路統合 / マーキングフェロモン / 節足動物 / 情報処理 |
Research Abstract |
動物は,種々の環境情報を受容し,それらの情報に実効的に重みづけをしながら一つの行動を達成するという処理系,すなわち「補償的情報処理機構」を獲得したことにより環境適応していると私は考えている.本研究では,動物のナビゲーション行動をモデルに,この「補償的情報処理機構」の枠組みについて提示することを目的としている.本年度は,ベニツチカメムシの帰巣において,1.化学マーキングと経路統合の階層性,2.経路統合における速さと正確さのトレードオフの関係,という2つの主要な点についての成果を達成することができた. 1.ベニツチカメムシの採餌では,「経路統合(移動中の定位方向と距離をモニターし,これを経路積算して出発地点を推定するナビゲーションシステム)」が用いられることは既に明らかにしている.今回は,帰巣の最終段階における化学cueの利用について検討した.触角情報を遮断したメスは,巣に定位することができなかった.幼虫を交換した巣にはメスは定位・定着するが,巣の基質を交換すると幼虫が自らの子であっても巣に定位・定着しなかった.帰巣途中に巣の基質を提示すると,メスは直接巣に入ることから,巣の基質にマーキングされた化学物質が経路統合に優先するという階層的なナビゲーション機構が存在することを明らかにした. 2.情報処理上の制約の1つである「速さと正確さのトレードオフ」が,本種の経路統合にどのような影響を与えるのかについて実験を行った.餌を奪おうとする同種他個体に遭遇した場合,運搬メスは歩行速度を上昇させる.速い歩行速度で帰巣しているメスと接触を受けず通常の速度で帰巣しているメスとで,定位精度に違いがあるかを観察した.歩行速度を上昇させたメスの帰巣方向の推定精度には変化がなかったが,巣までの距離を常に過大推定した.経路統合の際,特に距離情報の処理において,トレードオフの影響が強く見られることを明らかにした.
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Research Products
(1 results)