2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナビゲーション行動をモデルとした「補償的情報処理機構」の解析
Project/Area Number |
04J03679
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Research Fellow |
弘中 満太郎 浜松医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ナビゲーション / 定位 / キャノピー / ギャップ / 経路統合 / マーキングフェロモン / 複眼 / 網膜電位図 |
Research Abstract |
動物は,種々の環境情報を受容しそれらに実効的に重みづけをしながら一つの行動を達成するという処理系,すなわち「補償的情報処理機構」を獲得することで,環境変化に速やかに対応することを可能にしていると考えられる.昨年までの研究で,ベニツチカメムシは光コンパスを用いた経路統合システムと化学マーキングシステムという複数の定位システムを重みづけして,昼間のナビテーションを遂行することを明らかにした.本年度は,昼夜間での環境変化に対する情報処理様式の切り替えという問題を中心にすえ,夜間ナビゲーションシステムと感覚器適応について研究を進めた. 赤外線暗視システムが備わったハンディビデオを用いてカメムシの夜間の行動を観察した.複眼を遮光するとカメムシの定位は乱れ,夜間にも視覚情報が優先的に利用されていた.複眼の内部構造は夜間,暗順応として光を多く受容できるように形態変化しており,網膜電位図法で測定したところ複眼の光感度が昼間に比べて上昇していた.夜間の森の中でカメムシがどのようなcueを優先して定位しているのか,特にカメムシの頭上に存在するキャノピー(林冠)の視覚像の利用について検証した.林内でキャノピーとギャップ(空隙部)の光量を観測し,それを模した大型の箱形野外実験アリーナを作成した.アリーナ上面には,キャノピーのギャップを単純化した円形の開空部を1つもうけた.出巣したカメムシが餌を発見したところでギャップを移動するとカメムシの帰巣方向はギャップの移動に合わせて変化した. これらの結果は,ベニツチカメムシがキャノピーの視覚情報を定位のcueとして利用する夜間ナビグーションシステムを保持することを示している.また昼夜という光環境変化において,システムの重みづけを変えるのではなく,システムはそのままに感覚器を順応させるという情報処理機構を用いて本種が視覚ナビゲーションを達成していることを明らかにした.
|
Research Products
(2 results)