2004 Fiscal Year Annual Research Report
近世書道伝書をめぐる教育思想史的研究-書流「松花堂流」を中心に-
Project/Area Number |
04J03915
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
川畑 薫 神戸大学, 国際文化学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 芸道教育 / 伝授 / 近世教育思想 / 近世書道史 / 書と教育 / 書道伝書 |
Research Abstract |
平成16年度において、松花堂流に関する筆道伝書2点(『初門階等啓蒙鈔』及び『筆道秘伝抄』、ともに東京国立博物館資料館蔵)、松花堂流以外の筆道伝書2点(国会図書館蔵『入木口伝抄』、奈良県立図書館蔵『心正筆法論』)を調査閲覧し、写真版(あるいはマイクロフィルム)および紙焼を作成した。その一部分については、既に「書流・松花堂流における教授体系とその背景-寛文期・家元制度形成史一斑-」(『藝能史研究』第165号・2004年)として発表した。本論文では、松花堂流形成の中心的役割を担った藤田友閑、乗因父子が作成した筆道伝書の記述から、松花堂流の教授体系が日用書に根差していることを明らかにしたが、松花堂流にあって、そのような理想が、どのようなかたちで実践されたのか、という点について研究を進めている。目下、松花堂流における筆道修習の享受のあり方(享受層)をめぐって、武家層に着目した研究を行なっているが、具体的には、近世前期の桑名藩、白河藩、篠山藩、出石藩といった諸藩の藩政史料(関係各自治体のほか国会図書館、国立公文書館などに所蔵が分散)の収集に取組んでいる。その一部分については、「近世前期における松花堂流享受の一側面-藤田乗因と桑名藩士の交流を手掛かりに-」(『百舌鳥国文』第16号・2005年初夏発行予定)としてまとめた。本論文では、松花堂流が、武家における実用書(武家の書札礼を備えた文書)に対応し得る能力の養成を行なっていたことを、桑名藩の事例をもとに、明らかにした。同様の事例は、桑名藩以外にあっても何らかの形で見られると考えられる。このような松花堂流の受容のあり方を通して、近世「文字社会」と筆道修習の関係を明らかにする新たな視点を見出すことが可能と思われる。
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