2006 Fiscal Year Annual Research Report
ウィンドプロファイラを用いた梅雨期降水システムの形成・維持における地形効果の研究
Project/Area Number |
04J04021
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅本 泰子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 地形性降水 / ウィンドプロファイラ / 梅雨 |
Research Abstract |
本研究ではこれまでに、梅雨期の九州南西部で局地的に発生する線状降水帯について、東シナ海・九州梅雨特別観測データを用いて解析を行い、以下のような新たな知見を得た。 1.降水帯の発生には鹿児島県甑島の山岳地形がトリガーとなっている事が示唆される。 2.高度2km付近の風で流された降水雲が風下方向に列を成すことによりバンドが形成されていた。 3.風速が大きい程降水帯がより発達し、特に降水帯に対して垂直方向の風速が降水帯の強化に寄与していた。 これらの研究成果はAnnales Geophisicae誌や、気象研究ノート第208号メソ対流系にて発表した。 一方、しばしば強雨が発生する四国東部で夏季に発生した線状降水帯について、気象庁ウィンドプロファイラネットワーク(WINDAS)等の現業観測データを用いた解析により以下の知見を得た。 1.線状降水帯が四国山地の尾根に沿う位置で約10時間維持された為に局地的な豪雨をもたらした。 2.降水帯は四国山地の地形がトリガーとなって発生した降水雲が背景風に流されることにより形成されていた。 3.降水帯の南東側より吹き込む風により降水雲がより強化されていた。 気象庁非静力学モデル(MRI/NHM)を用いて再現・感度実験により上記の強雨に対する地形の効果が確認されている。 さらに九州と四国で発生した線状降水帯についての比較から、これらの線状降水帯は、地形による強制上昇がきっかけとなって発生した降水雲が次々と下層の一般風に流されることにより形成されており、対流不安定でかつ持ち上げ凝結高度が低く、大きなフルード数を持った湿潤大気と強いシアを持つ強風が対流圏下層に存在すれば、小さく低い山岳によっても発達した線状降水帯が形成されうることを示した。 また、信楽MU観測所設置のMUレーダーをはじめとする各種レーダーを用いた梅雨期観測を昨年梅雨期に2週間にわたり行い、いくつかの気象擾乱をとらえることに成功した。現在これらの観測データを解析中である。これらの研究成果は近々論文誌に投稿予定である。
|