2006 Fiscal Year Annual Research Report
大気を経由した陸起源物質の海洋生態系への影響と海洋生物からの大気組成への応答
Project/Area Number |
04J04097
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Research Institution | Hokkaido University |
Research Fellow |
笹川 基樹 北海道大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | メタンパラドックス / 溶存メタン / 沈降粒子 / セジメントトラップ / 動物プランクトン / 安定炭素同位体比 |
Research Abstract |
外洋域の亜表層(100m以浅)の過飽和メタンの起源・挙動を明らかにするために、北西部北太平洋における研究航海(KH04-3次航海)で海水試料・セジメントトラップ試料・動物プランクトン試料を採取し、各試料中の溶存メタンの濃度・炭素同位体比(δ^<13>C)を測定した。海水試料は大気平衡の値と比較して最高12%過飽和であり、炭素同位対比は大気平衡の値(-47‰)より重かった(最高-38.4‰)。これは現場で^<13>Cに富んだメタンが付加したためと考えられる。動物プランクトン内のメタン炭素同位対比は微生物起源メタンの報告値と一致する値であった(-50‰以下)。一方、セジメントトラップで採取した沈降粒子からのメタン炭素同位対比は微生物起源メタンの値より重く、海水中の過飽和分メタンの炭素同位体比と深度毎に一致した。これは沈降粒子から漏出したメタンが海洋亜表層のメタン過飽和の原因になっていることを示唆している。 沈降粒子からのメタン炭素同位対比が微生物起源メタンの従来の報告値より重い理由は、基質の枯渇やメタンの生成経路だけでは説明が付かず、沈降粒子内の酸化還元境界におけるメタン酸化によって^<12>Cが消費されるためと考えられる。今回求められた粒子からのメタン炭素同位対比とメタン酸化時の同位体分別係数の報告値を用いて、メタンの酸化率を求めると、深度100mまでに最低でも62%のメタンが酸化されていたと計算された。これは海洋の酸化還元環境の微少な変化によっても、海洋から大気へのメタン放出が激変する可能性を示している。
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