2004 Fiscal Year Annual Research Report
多年生植物の交配システムと花のディスプレイ戦略の進化
Project/Area Number |
04J04099
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
富松 裕 東京都立大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 加入 / 環境の確立性 / 生育場所の分断化 / 固体群行列モデル / 多年生草本 / 弾力性分析 / LTRE分析 / 密度依存的死亡 |
Research Abstract |
草本植物個体群の動態は、密度依存的な個体群調節や環境変動の結果、時空間的な変動を示す。しかし、長期的な調査から草本植物の個体群動態を分析した研究例はきわめてまれである。本研究では、北海道十勝平野の落葉樹林の林床で生育する多年生草本オオバナノエンレイソウの4個体群を対象として、個体群動態の観察を行った。先行研究から、小さな個体群では実生による加入量が制限される傾向にあることが分かっている。5年間(2000-2004)のデータから、行列モデルを基礎としたPartial Life Cycle Modelを作成し、個体群増加率(λ)の時空間変動や、変動の原因となる生活史過程について解析した。λは個体群や年によって大きく変動したが、多くの場合ではλ=1(漸近的に安定)からの統計学的な差異が認められない範囲にあった。開花個体が同一段階に留まる確率(P4)と実生の加入(F)を示すパラメータが、観察されたλの分断に特に大きく寄与し、P4やFはλとの間に正の相関関係を示した。またP4とFとの間で見られた正の共分散が、λの分散の増加に寄与していた。実生の加入(F)は、幼植物の生存率と負の共分散を示し、λの分散を減少させていた。以上の結果から、Fが減少する環境下では、弾力性の大きいほかのパラメータが共に変動して、λの低下を招いたことがわかる。本研究より、個体群の長期的動態は、個体の密度依存的な死亡や環境条件の変動によって規定されていることが示唆される。
|