2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世後期における対外関係の展開と守護勢力の動向-大内氏を中心に
Project/Area Number |
04J04104
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
須田 牧子 東京都立大学, 大学院・人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中世史 / 日本:韓国:中国 / 室町政権 / 朝鮮王朝 / 明王朝 / 大内氏 / 大蔵経 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、中世大内氏の対外関係を政治的関係のなかに位置づけるという本研究の最終的な課題を念頭に、まず大内氏と大内氏の対外関係に関わる基礎的事実を集積することに努めた。そのため、大内氏と室町政権に関わる基礎的な文献・史料をあらためて収集し、その評価・批判を行なうとともに、史料を真の意味で読解するための現地調査を行なった。現地調査は、宮崎県・鹿児島県・長崎県・福岡県・広島県・島根県・奈良県・滋賀県で実施した。これは主として、1、日明関係に関わる港町踏査、2、大内氏が深く関与していた朝鮮使節護送のためのポイント地点の確認、3、16-17世紀に輸出品として世界を席巻した銀を採掘した石見銀山とその周辺の城跡調査、4、日朝関係における日本側の最大の輸入品である大蔵経の追跡調査、を目的とするものである。1・2・3は今後の検討の前提となる基礎的調査であって、継続調査が必要である。4については、次のような事実を確認することが出来た。1、大内氏が朝鮮王朝から輸入した大蔵経は12〜15蔵。うち7割について史料から当時の施入先を確定することができる。また大蔵経輸入に際して大内氏領国内において寄附が集められたことがあるが、これは当該期大内氏の政治的必要と密接に連動する。2、現存する大蔵経は殆どが旧大内氏領国外(滋賀の園城寺・東京の増上寺・埼玉の喜多院など)にある。これは近世初頭に毛利氏が寄進したことによる(増上寺についてはまだ確定は出来ない)。3、当該期に輸入された大蔵経で現存するものを調査すると、朝鮮王朝から輸入しているにもかかわらず、高麗版のみならず中国版の大蔵経も存在する。このなかには14世紀の高麗官僚が中国から輸入し、韓国の地域寺院に施入した旨の願文が見られるものもある。これは朝鮮王朝の当時の記録とも一致する現象であり、当該期の日朝関係を考える上で示唆に富んでいる。
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Research Products
(4 results)