2004 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー・コンプトン散乱における非線形散乱光のエネルギー・角度分布測定
Project/Area Number |
04J04125
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Research Fellow |
神谷 好郎 東京都立大学, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レーザー / X線 / 電子ビーム / 非線形 |
Research Abstract |
高強度レーザーに、相対論的に加速された電子ビームを衝突させてエネルギーを与えることで、レーザー光子をX線として取り出すことができる。その素過程,は(線形)コンプトン散乱と呼ばれ、クライン・仁科の式によって表現される。この場合のレーザー強度と生成X線量には比例関係があるが、さらなる高強度レーザーとの散乱では上記の比例関係が崩れ始める。それは、多数のレーザー光子が一つの電子とコヒーレントに相互作用する非線形な素過程が混ざり始めるためで、それを非線形コンプトン散乱と呼んでいる。 レーザー・電子衝突によるX線生成は、コンパクトな次世代X線源として注目されているが、その実用化に向けて非線形コンプトン散乱の理解は不可欠と言える。応用の面で特に理解しておきたいのは、非線形散乱光の持つ特徴的なエネルギー・角度分布で、私たちは、それらについての実験研究を続けてきている。 高強度レーザー中で電子の質量が実効的に重く見えるマスシフト効果も非常に興味深い。古典的には電子の蛇行運動によるものであると表現される。レーザー電子衝突においては電子の進行軸に平行な運動量成分が垂直な成分に移動した結果であり、生成X線のエネルギーが低エネルギー側に遷移する事で測定される。 実験は、アメリカ・ブルックヘン国立研究所にある60MeV電子加速器と高強度炭酸ガスレーザーを使用して行われる。レーザーは1TWのピークパワーまで増強することを一つ目の目標とし、現在調整が続けられている。また、衝突技術の向上、X線の測定方法の開発など、その他本実験にむけた準備は整いつつある。
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