2005 Fiscal Year Annual Research Report
粒子線の悪性脳腫瘍細胞に対する治療効果比向上に関する研究
Project/Area Number |
04J04226
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Research Fellow |
盛武 敬 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線安全研究センター・レドックス制御研究グループ, 特別研究員(PD)
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Keywords | 重粒子線 / 炭素線 / フリーラジカル / 抗酸化剤 / エダラボン / アミフォスチン / 医療被曝 / 線量測定 |
Research Abstract |
ガン治療に用いられる放射線の効果は、腫瘍に対する効果と正常組織に対する傷害の比、すなわち「治療効果比」によって判定される。本研究ではこの比を最大にする為に、放射線化学・生物学的な手法と、物理・工学的な手法を用いた開発を行っている。 本年度は、重粒子線の深度方向の影響、すなわちLETの相違による細胞傷害性の相違を解明した。LETの低い部分ではラジカルによる酸化的傷害が強く、一方LETの高い部分では、直接の電離作用による傷害が強く見られることが明らかになった。さらに、このラジカルによる傷害作用は、エダラボンやアミフォスチンなどの抗酸化剤によって、低LETの領域でのみ効果的に低減されることを、放射線照射DNA溶液中の8-OHdGを測定した実験と、脳腫瘍培養細胞を用いた実験で確認した。このことから、粒子線治療を受ける患者に抗酸化剤を投与しておくことで、腫瘍周辺の正常組織への障害を防ぐ可能性が有ることが示唆された。 放射線治療を受ける患者は、治療前に既に長時間に及ぶ血管造影や、頻回のCT撮影を行っていることが多く、治療経過中に思いも寄らぬ副作用を来すことを経験する。そこでまず、長時間の血管内治療で正常な眼球(水晶体)の被曝を低減するための小型なエックス線遮蔽装置を試作した。さらに遮蔽部位が対象を自動で追尾する装置を開発し終えたので、今後は実際の血管撮影装置に搭載して遮蔽能力を測定する予定である。 ICRPより以前から、患者のカルテに被曝線量を記載するよう勧告がなされているが、現在のところ、検査や治療を行う際の患者個人被曝線量を、正確に記録するシステムは無い。そこで我々は、頭部における被曝線量測定装置を開発し、実際の患者での被曝線量分布測定に成功した。これらの試みは、正常組織への放射線被曝を可能な限り低減し、結果的に「治療効果比」を向上させるための重要なステップと捉えている。
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