2005 Fiscal Year Annual Research Report
層状ダブルペロブスカイト・マンガン酸化物における電荷整列転移の圧力効果
Project/Area Number |
04J04647
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Research Fellow |
岡本 裕司 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 機能性酸化物 / Mn酸化物 / 磁気抵抗効果 / 酸素不定比性 / ペロブスカイト / ハーフメタル / 電荷整列 / 圧力効果 |
Research Abstract |
本研究では、酸素欠損型層状ダブルペロブスカイトMn酸化物BaREMn_2O_<5+δ>(REは希土類元素)における各RE種での酸素不定比性とこれに伴う物性変化を系統的に解明することを目的としている。Mn酸化物では、RE種のイオンサイズが違うため、化学的圧力効果による局所構造変化が期待できる。本物質系では化学的圧力効果や酸素不定比性による物性制御が可能であり、これらにより本物質系を系統的に理解することができる。さらには、近未来のスピントロニクス展開における中核を担う材料となると信じられる新規「ハーフメタル」物質を、本研究で得た知見をもとにペロブスカイト構造を持つ酸化物の範疇で探索研究した。 本研究では、酸素欠損型層状ダブルペロブスカイトMn酸化物Ba(Y, Ca)Mn_2O_<5+δ>の物性を、その酸素量やCa^<II>/Y^<III>異原子価元素置換量の相関として調べた。母物質BaYMn_2O_<5+δ>は絶縁体的挙動を示すので、それらを金属伝導化するために、Ca^<II>/Y^<III>異原子価元素置換によるホールドーピングを行った。しかしながら、いずれの酸化物においても相互固溶全領域において金属伝導性は発現しなかった。これは、異原子価元素置換しても母物質で生じている電荷整列が支配的であり、キャリアーが局在しているためだと考えられる。さらに、本物質と類似な構造をもつカチオン欠損型ペロブスカイトMn酸化物(LaMn)_<1-x>O_3のハーフメタル化を目指して、カチオン欠損量と物性との相関を探究した。カチオン欠損量を調整することによりMn^<3+>/Mn^<4+>の混合原子価状態が発現できるのでハーフメタル状態の発現が期待できる。まず(LaMn)_<1-x>O_3の単一相試料を常圧下で合成し、それに超高圧下酸素添加反応法よる後熱処理を施すことにより過去に報告例のない大きなカチオン欠損量(X_<max.>〜0.12)を持つ試料を得ることに成功した。これらの試料の物性とカチオン欠損量との相関を系統的に調べた結果、(LaMn)_<0.901>O_3試料が低磁場で鋭い磁気抵抗ピークを示し、ハーフメタル物質に特有な磁気抵抗効果が発現することが分かった。同時に、本物質のバンド構造をLDA+U法によって計算した結果、(LaMn)_<0.901>O_3がハーフメタル状態にあることが示唆された。
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Research Products
(1 results)