2005 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物におけるタイプBモノガラクトシルジアシルグリセロール合成酵素の機能
Project/Area Number |
04J04675
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 康一 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生体膜 / 糖脂質 / リン脂質 / リン欠乏 / MGDG合成酵素 / オーキシン / サイトカイニン / リン酸シグナル |
Research Abstract |
高等植物の葉緑体では、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)とジガラクトシルジアシルグリセロールがチラコイド膜脂質の約80%を占めている。これらのガラクト脂質は、栄養が十分な生育条件下では葉緑体外にはほとんど存在しない。しかし、リン欠乏時にはミトコンドリア膜や細胞膜に蓄積することが知られており、これらの糖脂質がリン脂質の減少を補っていることが示唆されている。このように、環境に応じて糖脂質がリン脂質の代替をすることで、植物はリン欠乏への適応性を高めていると考えられる。本研究では、このリン欠乏時における膜脂質の転換機構を、糖脂質合成の観点から明らかにすることを目的としている。 シロイヌナズナを用いた研究から、リン欠乏時にはタイプB MGDG合成酵素遺伝子の発現が上昇し、それに伴ってMGDG合成活性が増大することが分った。さらに、リン欠乏時におけるタイプB MGD遺伝子の発現制御に、リン酸が直接シグナルとして関わっていることや、オーキシンとサイトカイニンのバランスが重要であることを明らかにした。脂質解析を行ったところ、これらのシグナルは実際、リン欠乏時における脂質の転換にも関与していることが明らかとなった。オーキシン非感受性二重変異体axr4 aux1では、リン欠乏時でのタイプB MGD遺伝子の発現誘導が低下し、また糖脂質の蓄積も減少していたことから、オーキシンシグナルが実際にin vivoでリン欠乏時での糖脂質の蓄積に重要な役割を担っていると考えられる。リン欠乏は植物体全体において起こるのに対し、オーキシンなどの植物ホルモンによるシグナルは組織特異的に誘導されることから、リン欠乏時には、このような機構によって、必要な組織のみで膜の転換が誘導されるようになっているのだろう。
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Research Products
(1 results)