2005 Fiscal Year Annual Research Report
現代シリアにおけるイスラームと政治-国家の変容とイスラーム思想の関係
Project/Area Number |
04J04715
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
末近 浩太 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | シリア / レバノン / イスラーム / 地域研究 / 政治学 |
Research Abstract |
本年度は、第1に、2004年3月に京都大学に提出した博士学位論文「現代シリアにおけるイスラームと政治」の加筆・修正をしたものを単著として刊行することに取り組んだ。シリアにおいて1960年代から継続する権威主義体制に対して、近年反体制派から強い不満が表明されている。その代表的な勢力としてのイスラーム運動(シリア・ムスリム同胞団)による「民主化要求」の実態を明らかにし、博士論文で取り組んできた19世紀末からのシリアにおける国家の変容とイスラーム思想の関係を、昨今の「民主化」や「人権」といった現代的な問題群にまで絡めて論じた。以上の成果は、2005年12月に、『現代シリアの国家変容とイスラーム』(ナカニシヤ出版)として刊行した。 第2に、グローバル化する「イスラーム・テロリズム」の実態とその内在的論理(の一部)を解明するべく、「シリア系サラフィーヤ運動のネットワーク」についてのフィールド調査を行った。2006年2月に3週間、シリア、レバノン、英国を訪問し、文献資料と関係者、研究者との議論・意見交換を進めた。そこで浮き彫りになったのは、性急な行動主義を採用するイスラーム主義者たちと、アラブ諸国や欧州において大多数を占める穏健な「中道派」のムスリムとのコミュニケーションがいっそうの断絶を見せつつあることであった。この問題については、さらなる調査が必要である。
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Research Products
(2 results)