2004 Fiscal Year Annual Research Report
安永期噺本の外在的および内容的研究-舌耕文芸研究の視点から-
Project/Area Number |
04J04773
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
山下 久美 (鈴木 久美) 国文学研究資料館, 文学資源研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近世文学 / 噺本 / 漂流記 / 擬古文 |
Research Abstract |
本年度は、研究課題の初年度として、当初の目的に掲げた噺本の基礎研究(作家・板元の実態調査)と作品の表現表記等の文体研究という2つの面から調査・作業をおこない、その成果として二篇の論考をまとめた。 1.「作家・板元といった作品の外在的要因を解明し、これを手掛かりに同時代ジャンルの文芸との相関関係を分析する」という研究目的のもと、安永期に『今歳咄』シリーズ刊行において中心的な役割を果たした噺本作家(奥村意語)の噺本以外の著作調査を行った。今回、「『老翁談』紹介と翻刻-近世漂流記の一形態-」で扱った『老翁談』は、板本の形を取った漂流記であり、そのほとんどが写本でしか確認されていない近世漂流記資料において、希少な作品である。噺本作家奥村意語の文芸活動領域の広範さを示す資料であるとともに、漂流記文芸としての価値も認められる。 2.もう一つの研究目的である「噺本の表記・表現面での特質を体系的に解明し、舌耕文芸としての性質を再検証する」という作品の内容面での研究については、俗語を使用した一般的な噺本とは性質を異とする、雅語で書かれた雅文笑話集を考察し、それを「雅文笑話集の位置付け-『しみのすみか物語』を中心に-」にまとめた。雅文笑話集は、後期に区分される噺本だが、その収録笑話のほとんどが、前期・中期噺本の類話である。その改作の手法を分析することによって考察対象の雅文笑話のみならず、安永期噺本の文体・表現の特徴を浮かび上がらせることも可能となった。
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Research Products
(2 results)