2004 Fiscal Year Annual Research Report
前弧海盆堆積物から産出する冷湧水性化学合成化石群集の堆積環境と湧水の規制要因
Project/Area Number |
04J04844
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
北崎 朋美 国立大学法人横浜国立大学, 大学院・環境情報学府, DC2
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Keywords | 大船層 / 化学合成群集 / 上総層群 / メタンハイドレート / Conchocele |
Research Abstract |
上総層群大船層から,主にConchoceleからなる化学合成化石群集が,横浜市の"氷取沢市民の森"西縁部の庄戸第二公園周辺から産出する.この化学合成化石群集を産出する露頭は,Sg3(1.83Ma:藤岡ほか,2003)凝灰岩層からおよそ30m下位の大船層下部にあたり,化石群集は凝灰質泥質砂岩層及びパミス質砂岩層中に密集,あるいは散在的に産出する.群集の地表面下での分布,及び地層の3次元的分布を明らかにするために,群集を産出する露頭の直上とその周辺の2ヶ所の計3ヶ所で層理面に垂直なボーリングを実施した.これらのコアの解析と群集の周辺に露出する地層を調査した結果,以下のことが分かった. 1)地層の最下部は泥岩層及び砂質泥岩層からなり,その一部は,挟在する凝灰岩層の走向と傾斜が,この地域の一般的な走向と傾斜と著しく異なること,断層などの顕著な変形が見られないことから,海底地すべり堆積物であると判断される. 2)海底地すべり堆積物の上位には,チャネル充填堆積物と考えられる凝灰質砂岩層とパミス質砂岩層が分布し,パミス質砂岩層は,明瞭な侵食面を伴って泥岩層と凝灰質砂岩層の上位に直接重なる. 3)化石群集は,パミス質砂岩層から散在的に,その上位の凝灰質泥質砂岩層からはコンクリーション中に著しく密集して産出する. 以上の結果から,これらの堆積構造は,メタン放出の直接的な証拠である化学合成群集と密接に伴っていることから,メタンハイドレートの分解をその起源とする地質構造である可能性が高い.大船層の古水深は底生有孔虫化石により,200-500mと推定されており(江藤ほか,1987),この深度は日本周辺におけるメタンハイドレートの存在限界水深と重なる.このような深度では,水温の上昇や海水準の変動などにより,容易にハイドレートが分解し,メタンが放出されると考えられる.
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Research Products
(1 results)