2004 Fiscal Year Annual Research Report
アミメアリにおける敵対コロニーの認知メカニズムとコロニーの遺伝形質
Project/Area Number |
04J04914
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森村 幸代 (真田 幸代) 岡山大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 真社会性昆虫 / 学習 / コロニー識別 / 雌性産生単為生殖 / 敵対行動 / 遺伝変異 / 行動変異 / 進化生態学 |
Research Abstract |
アミメアリは他コロニーの中から巣場所が隣接するコロニーを学習し、それらのコロニーに対してより激しい敵対行動を示す。しかし、一部には隣接コロニーを全く識別しないものも存在し、隣接コロニーの識別能力にはコロニーによって変異がある。このような行動変異が遺伝的要因によるものなのか、生息環境などの状況依存的要因によるものなのかは明らかでない。そこで、コロニー間での交配実験による解析が遺伝要因を明らかにするための有力な手法として期待されるが、アミメアリではワーカーが雌性産生単為生殖によって次世代のワーカーを産み、交尾嚢も持たないため、交配実験は不可能であると考えられてきた。さらにオスも希に大きなコロニーで生産されるのが知られていたが、発生上のミスで生じている繁殖上意味のない存在と見なされてきた。しかし、通常のワーカー形態とは異なり、体サイズが大きく、女王に近い形態、すなわち単眼と数多くの卵巣小管、そして交尾嚢を持つ女王型ワーカーが一部の個体群に存在することが明らかになってきた。もし女王型ワーカーとオスが同じ個体群内のコロニーで生産されているならば、女王型ワーカーとオスによる有性生殖の可能性がある。本研究の調査で、岡山県内の個体群で女王型ワーカーを発見し、さらにオスを生産するコロニーも存在した。オスの行動を詳しく調査すると、交尾行動は他のアリ類のオスに見られる正常な行動と何ら変わりはなかった。さらに女王型ワーカーを解剖して交尾嚢内を観察し、一部の個体が保持していた内容物を遺伝解析した。女王型ワーカーのサンプル数が少なく、オス由来の物質であるという確たる証拠は得られなかったが、女王型ワーカーとオスによる交尾の可能性は高いと考え、今後さらに実験を行う予定である。本種における有性生殖が発見できれば、遺伝解析に応用することができ、他コロニー認知における行動変異の遺伝学的研究の発展が期待できる。
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