2006 Fiscal Year Annual Research Report
アミメアリにおける敵対コロニーの認知メカニズムとコロニーの遺伝形質
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04J04914
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森村 幸代 (真田 幸代) 岡山大学, 大学院環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 真社会性昆虫 / 雌性産生単為生殖 / 有性生殖 / 交尾行動 / 行動多型 / マイクロサテライトマーカー / 受精嚢 / Pristomyrmex punctatus |
Research Abstract |
アミメアリPristomyrmex punctatusには繁殖カストである女王が存在せず、ワーカーが雌性産生単為生殖することが知られている。一方、最近の研究で女王に特徴的な形態の一つである単眼と受精嚢を持つ大型ワーカーが存在することも報告されている。本研究ではこれらの大型ワーカーがオスと交尾し有性生殖するかどうか検証し、アミメアリを用いた遺伝学的研究の構築を試みた。本年度の研究では岡山市今岡に生息する集団以外に、紀伊長島集団にみられる大型ワーカーを用いて受精嚢内にオスの精子が存在するか検証した。大型個体の1割近くが受精嚢内に何らかの物質を含んでいることが確認できた。しかしそれらから抽出した物質を染色・顕微鏡下で観察したが、精子を確認することはできなかった。さらに受精嚢内容物からDNAを抽出しマイクロサテライトマーカーによる検証も試みたが、オスに特異的な対立遺伝子の確認はできなかった。以上の結果から、大型ワーカーがオスと交尾している可能性を示唆するデータを得ることができたが、精子であることを明確に確認するには至らなかった。この原因の一つとしては、ワーカーの寿命がおおよそ一年と比較的短いため、オスから受け渡される精子の数は他種の女王に比べ非常に少ないことが考えられる。今回の実験で用いた大型ワーカーは繁殖期から数ヶ月経過していたことも考慮すると、精子の検出が通常の方法では困難であった可能性がある。野外で採集した大型ワーカーの検証には、これまで以上に精度の高い検出方法の開発が必要である。また、これまで使用してきた2つのマイクロサテライトマーカーの他にさらに2つのマーカーの開発を行った。これら4つのマーカーについて、2つの野外集団内での対立遺伝子頻度を解析したところ、集団内に多型がみられ、集団間では異なる対立遺伝子が存在することが明らかになった。今後は集団間の交雑実験を試み、学習・認知能力に関する個体間変異の遺伝的背景について検証する。さらに解剖学的な研究と、交配実験を行い有性生殖と単為生殖を利用したアミメアリの社会構造および行動的変異の進化メカニズムを明らかにしていく。
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