2004 Fiscal Year Annual Research Report
近縁種間での網羅的遺伝子比較解析に基づいた、原核生物のゲノム進化機構の研究
Project/Area Number |
04J04982
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 洋路 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 完全ゲノム配列 / 原核生物 / 水平遺伝子移行 / マルコフモデル / 病原性 / 転写調節 |
Research Abstract |
原核生物の世界においては水平遺伝子移行が頻繁に起きることが知られており、これらの進化的意義を解明するために、マルコフモデルを用いて完全ゲノム配列から高感度で水平移行遺伝子を検出する方法を開発した。この方法は分子系統樹解析と違い、ホモロジーに頼らずに水平移行遺伝子およびそのドナー生物種を推定できることが大きな利点である。このマルコフモデル法を116種の原核生物ゲノムに応用したところ、324653個の遺伝子の中から、約14%にあたる46759個の遺伝子を水平移行の候補として検出した。生物種ごとに見ると、これらの割合は系統によって非常に異なることが分かった。例えば、ゲノム当たりの平均は約12%であったが、真正共生細菌のBuchneraには殆ど水平移行遺伝子は無く、一方で古細菌のMethanosarcinaでは全遺伝子の4分の1近くが水平移行遺伝子から成るという結果を得た。以上のような系統ごとにおける水平移行遺伝子の割合の違いは、各々の生物の生活環境によるものであると推測された。さらに今回検出された水平移行遺伝子の機能を網羅的に調べて分類したところ、プラスミドやファージなどの可動性遺伝因子だけでなく、病原性や転写調節に関わっていると思われる遺伝子が多く見つかった。こうした水平遺伝子移行の全体的傾向は、我々の研究で初めて明らかにされた。 また現在の真核生物において、ミトコンドリアや葉緑体などのオルガネラは共生原核生物をその起源とすると考えられており、進化の過程においてそれらの原核生物ゲノムから多くの遺伝子が核ゲノムに移行したことが示唆されている。これらも原核生物に関係した一種の水平遺伝子移行ととらえることができる。そこでヒトやシロイヌナズナ等の真核生物ゲノム中から、オルガネラ由来の遺伝子を上記と同様にマルコフモデル、さらには分子系統樹解析等の手法を用いて検出することを試みている。
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Research Products
(1 results)