2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J05030
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 和利 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ES細胞 / ERas / PI3 kinase |
Research Abstract |
胚性(ES)幹細胞は分化多能性と高い増殖能を有する細胞である。本研究ではES細胞の腫瘍細胞に類似した増殖能のメカニズムを明らかにする目的で公共データベースを利用して新規遺伝子の探索を行った。結果、原癌遺伝子Rasと相同性を有するERasを同定した。ERasは未分化ES細胞において特異的に発現し、PI3 kinaseを活性化することにより、ES細胞の高い増殖能を促進していることを明らかにした。 本年度はES細胞におけるPI3 kinase経路の役割をより詳細に解析した。ERas遺伝子を欠損させたES細胞において、PI3 kinaseの活性は低下しているが、完全には消失するまでにはいたらなかった。そこで、PI3 kinaseのドミナントネガティブ変異体の発現および特異的阻害剤による機能阻害実験を試みた。ドミナントネガティブ変異体の高発現および高濃度の阻害剤処理はES細胞の細胞死を引き起こした。一方、中程度の発現および低濃度の処理では、ES細胞の分化を引き起こすことを明らかにした。これらの結果は、PI3 kinase活性はES細胞の増殖のみならず、未分化状態の維持にも寄与していることを示唆している。さらにPI3 kinaseの阻害による分化誘導は、16時間という短時間の処理においても引き起こされることを、マーカー遺伝子の発現変化により確認した。 増殖と多能性維持機構が果たして、同じ経路で制御されているのか、分離して考えうるのかは現在のところ不明である。今後はPI3 kinaseの下流に位置する多能性維持分子の同定、解析を行う予定である。
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Research Products
(2 results)