2004 Fiscal Year Annual Research Report
光中断を用いたイネの開花におけるシグナルネットワークの解明
Project/Area Number |
04J05053
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
石川 亮 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イネ / 開花 / 光中断 / フィトクロム / 短日植物 |
Research Abstract |
植物は日長に反応して開花を誘導する性質から大きく、短日植物と長日植物に分けられる。分子遺伝学を中心とした研究から、これら植物の開花制御に関わる分子シグナルネットワークの理解が進んでいる。長日植物であるシロイヌナズナと短日植物であるイネを用いた研究から、両植物が日長を感知して開花を誘導するシグナルネットワークの骨格は保存されていることが示唆されている。しかしながらその制御機構の違いには不明な点が残されている。本研究では、イネの開花機構を明らかにするため短日植物に見られる光中断による花成遅延現象を利用して、開花関連遺伝子の発現解析を行った。イネの開花シグナルは明暗周期を感知した概日リズム構成因子からOsGI、Hd1へと伝達され開花のスイッチとされるHd3a遺伝子の発現を制御することによって行われていることが明らかになっている。播種1ヶ月後のイネに対して暗期の中央で10分間の光中断処理を一度行った場合、開花のスイッチとされるHd3a遺伝子の急激な発現抑制が観察された。この抑制には上流因子であるOsGIとやHd1の発現パターンの変化を介していないことから、光による直接のシグナルの影響が存在することが示唆された。光中断に伴うHd3a遺伝子の抑制は、暗期の中央でもっとも効果が大きく、暗期の長さが重要であることが確認された。さらに光中断によって抑制されたHd3a遺伝子の発現は、翌日からの短日処理により抑制が解除されていることがわかった。加えてフィトクロム経路に変異の生じた変異体に対して光中断処理を行ったところ、Hd3aの発現抑制は観察されなかった。このことから、フィトクロムを介したシグナルがHd3aの発現調節に関係していることが示唆された。 以上の結果から、暗期に照射された光はフィトクロムのシグナル伝達系を介して概日リズムで誘導されたHd3aの発現を負に制御していることが示された。
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