2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J05107
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平山 至大 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 双曲型力学系 / 葉層 |
Research Abstract |
力学系の双曲性の概念を一般化したものに部分的双曲性がある。双曲性とは写像の微分が拡大、縮小の作用をもつことであったが、部分的双曲性はそれら2つの作用に加えてそれらの"中間"の作用をもつことで特徴付けられる。これは例えば散逸系に周期的外力が働く場合や慣性多様体をもつ偏微分方程式で記述される系などの物理的モデルに現れる性質である。ただし拡大、縮小作用に関する不変分布がそれぞれ可積分であるのに対し、この中間作用に関して不変な分布の可積分性は非自明であるなど、その解析は双曲型力学系の場合とは異なった様相を呈している。 近年、部分的双曲性を持つ力学系に対して、その摂動に対するエルゴード性の安定性問題やそれに関わる種々の定性的問題が次第に明らかにされ、このクラスの力学系の研究が再び盛んに行われている。本年度私はYakov Pesin氏(ペンシルヴァニア州立大学、アメリカ合衆国)を訪れ、Riemann多様体上の微分同相写像の反復が定める部分的双曲型力学系の不変葉層について以下のような研究を行った。 不変葉層に対して絶対連続性とよばれる性質があり、力学系においてエルゴード理論を展開するときなどに極めて重要である。上述した拡大、縮小作用に関する分布から得られる不変葉層は絶対連続性をもつ。他方、中間作用に関する分布はたとえ可積分であったとしても得られた不変葉層が絶対連続性をもつとは限らない。この非絶対連続現象については、中間方向が1次元の場合や、ある3次元トーラス自己同型写像を用いた例などが考察されているが、一般的な系に対する考察はなされていなかった。私はPesin氏とともに、中間不変葉層に対する適当な仮定のもと、非絶対連続現象が起こる十分条件をLyapunov指数を用いた簡明な記述で与え、さらにその条件をみたす写像は十分豊富にあることを明らかにした。この主張を含むより一般的な結果を得ており、現在共著論文を執筆中である。
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Research Products
(2 results)