2005 Fiscal Year Annual Research Report
茎頂分裂組織形成遺伝子の解析から陸上植物の胞子体世代延長の誕をさぐる
Project/Area Number |
04J05131
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森岡 恵子 (榊原 恵子) 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 発生進化 / ヒメツリガネゴケ / ホメオボックス遺伝子 / ARP遺伝子 / 胞子体 / 茎頂分裂組織 |
Research Abstract |
被子植物胞子体の茎頂では、細胞分化を促進する遺伝子と未分化な状態を維持する遺伝子が異なる領域で機能し、未分化な分裂組織を維持しつつ、器官が分化していると推定される。未分化な状態の維持に関わる遺伝子としてKNOXクラス1遺伝子が、葉原基でKNOXクラス1遺伝子の発現を抑制し器官分化を促進している遺伝子としてARP遺伝子が知られている。KNOXクラス1遺伝子は植物ホルモンの量を制御することで茎頂分裂組織の細胞分裂、及び伸長を制御し、茎頂分裂組織の未分化な性質を維持することが報告されている。KNOXクラス1遺伝子とARP遺伝子の関わる分子機構は非種子植物ヒカゲノカズラ類においても保存されていることが報告された。コケ植物の胞子体は維管束植物と異なり、葉などの側生器官を持たず、先端に1個の胞子嚢を分化し、その発生を完了する。申請者はKNOXクラス1遺伝子とARP遺伝子の関わる分子機構がコケ植物でも保存されているかを調べることで、陸上植物の形態進化を調べることを目的とした。 コケ植物KNOXクラス1遺伝子3個を単離し、これらの発現様式を調べたところ、胞子体の初期発生で発現し、維管束植物のように発現が長期間維持されないことが明らかになった。また、KNOXクラス1遺伝子の三重遺伝子破壊株は胞子体の形態に異常を示し、これらの遺伝子が胞子体の正常発生に必須であることを明らかにした。また、組織切片による形態観察から、三重遺伝子破壊株では胞子体の初期発生において細胞分裂、細胞伸張が抑制されているため、多面的な形態異常を示すことがわかった。また、ヒメツリガネゴケゲノム中にはARP遺伝子の相同遺伝子は存在しないことがわかった。すなわち、KNOXクラス1遺伝子とARP遺伝子による茎頂分裂組織維持の分子機構はコケ植物と維管束植物の分岐後に維管束植物で獲得されたと推定された。
|